身近な食品に含まれる成分で生活習慣病や老化を予防する「食品科学」
健康づくりに役立つ「機能性表示食品」
健康に生きていくためには、食事からさまざまな栄養素を、バランス良く摂取するのが理想です。ただ、その時々の体調に合わせて、必要な栄養素を選択・補給するのはなかなか困難です。そこで役に立つのが「機能性表示食品」です。これは、事業者の責任において科学的根拠に基づいて開発され、健康の維持や増進に役立つことを表示するものとして届け出られた食品です。
機能性表示食品の開発にも関わり、食材に含まれる機能性を科学的に評価したり、成分を効果的に引き出す加工方法を研究したりするのが「食品科学」という学問領域です。
未利用の農作物で新たな付加価値
熊本県の天草には、インド原産の「モリンガ」という樹木を栽培している地域があります。この葉には「GABA(ギャバ)」というアミノ酸の一種が豊富に含まれています。そこで、大学と地元企業が共同で、ストレスを緩和したり、血圧を下げたりする機能性を表示した「モリンガ茶」を開発しました。また、長崎県内の企業と共同して、通常は利用されていないビワの葉と、緑茶としては商品価値が低い三番茶を原料に、カテキン重合ポリフェノールが内臓脂肪を減らす発酵茶を開発しました。いずれも地場産品を原料にした機能性表示食品で、地域産業にも貢献する商品です。
加工品にすることで遠方にも販売可能に
宮崎県の特産品に「日向夏(ひゅうがなつ)」というミカン科の果物があります。この日向夏に含まれる「アラビノガラクタン」という多糖類には、カルシウムの吸収を促進し、骨代謝を改善する働きがあることを人試験等で発見しました。日向夏などの果物は、鮮度が重要で、遠方への輸送にコストがかかります。そこで、日向夏の成分を効率的に抽出してジュースに加工した「毎日おいしく日向夏」を商品化して、日常的に摂取しやすく、機能性が期待できる商品を遠方にも販売できるようにしました。
このように食品科学の研究には、人々の健康に役立つ商品を開発するだけでなく、地域の産業を後押しする力もあります。
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先生情報 / 大学情報
崇城大学 生物生命学部 生物生命学科 教授 西園 祥子 先生
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