観光情報が、渋滞を緩和させ、カーナビを進化させる!?

観光情報が、渋滞を緩和させ、カーナビを進化させる!?

「渋滞解消」もツーリズムのテーマ

日本の高速道路においては、大都市近郊で休日に発生する渋滞が大きな問題となっています。一説によると、渋滞は約10%の需要超過で起こると言われています。つまり、超過した約10%分の自動車さえほかの場所へ移動することができれば、理論的に渋滞は解消できることになります。10%程度であれば、観光情報をうまく利用することでなんとかなるかもしれません。こうした検討も、ツーリズム(観光)研究の大きなテーマであると言えます。

観光情報をどう知らせるか

渋滞が起こるのは、多くの自動車が同じ時間帯に同じ道路区間を利用するからです。例えば、東京に向かう高速道路で日曜の夕方に渋滞が起きやすいのは、旅先から帰る自動車が同じような時間に帰ろうとするからで、その一部がもう一箇所でもいいから観光地に立ち寄ってくれれば、渋滞は緩和できるはずです。カーナビやスマートフォンなど、ドライバーへ観光情報を提供する手段はたくさんありますが、どんな情報をどのタイミングで提供すれば立ち寄りを促せるかがポイントです。

カーナビを進化させる

現在、農村部の観光による活性化をめざして、「グリーンツーリズム」と呼ばれる新たな観光コンセプトが提案されています。農村部へは自動車で行くことが多いですが、カーナビを使用した場合、都市部とは違った思わぬ問題にぶつかることがあります。例えば、めざす果樹園の住所を入力して行っても、果樹園を所有する農家の自宅に案内されてしまい、肝心の果樹園はかなり離れたところにあるというケースです。また、カーナビは通常、地図を2次元でとらえているので、高低差の大きい地形の場合、カーナビの示す最短ルートだと逆に目的地に行きにくくなってしまうケースもあります。これらは、カーナビがもともと都市部での利用を前提として開発されてきたことの弊害です。こうした課題を解決する方法を提案することがグリーンツーリズムの参加者の満足度を高め、今後の一層の普及につながるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 清水 哲夫 先生

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 清水 哲夫 先生

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交通学、観光計画学

先生が目指すSDGs

メッセージ

われわれ首都大学東京都市環境学部の自然・文化ツーリズムコースは、全国でもユニークな、理系の視点でツーリズムを研究するコースです。しかし、今日の複雑な社会を運営していく上では、理系・文系を問わず、さまざまな基礎知識が必要になってきます。ツーリズムは、まさにその代表例になっていると言えるでしょう。あなたが今後、どんな分野に進学をしようと考えているとしても、どんな分野、どんな種類のものでもいいので、ぜひ、たくさん本を読んでほしいと思います。

先生への質問

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。