霊の世界は無限に広がっている

霊の世界は無限に広がっている

霊とは何か

霊の付く日本語は、数多くあります。霊、霊魂、心霊、精霊などなど。これらの言葉に共通しているのは、私たち人間が死を迎えると失われるのは肉体だけで、心あるいは精神は失われることはないという意識です。霊とはそういった心や精神の存在を指します。霊にまつわる伝承や言い伝えは、日本を含めて世界中にあります。日本でも、霊的なものを身近に感じる文化が根付いています。

スピリチュアリズムとオカルト

21世紀に入ってからの新しい動きとして、霊的な存在に対して新たな解釈をするスピリチュアリズムの認知度が高まっています。スピリチュアリズムとは、霊は存在し、霊界があり、人間は死ぬと霊になって霊界に行き、生きている私たちも霊界と交流できるという考え方です。
この思想は、今から150年以上前にアメリカで生まれました。それまでキリスト教由来の伝統が社会を支えていた欧米では、ダーウィンの「進化論」やマルクスの『共産党宣言』など、いわゆる唯物論的で科学的な考え方に変えることを強いられていました。そういった状況下で、キリスト教に代わる心のよりどころを求めた人々に支持されたのがスピリチュアリズムです。
同じような社会の変化は、20世紀後半の日本でも起きました。1973年に発生したオイルショックは、それまでの急激な経済成長の時代に終わりを告げました。同時に科学を信じていた日本人の心の中で、科学がもたらす悪い側面を心配する気持ちが大きくなりました。そのときに流行したのが、スプーン曲げのような超能力や、ノストラダムスの大予言など、科学では説明できない現象でした。

不安な時代になると注目される

霊のように科学的に証明できないものは、社会全体が不安になっているときに受け入れられやすい傾向があります。現代の日本でスピリチュアリズムが支持されるのは、私たちの抱える不安がとても大きくなっていることの表れなのかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

横浜国立大学 教育学部 学校教員養成課程 教授 一柳 廣孝 先生

横浜国立大学 教育学部 学校教員養成課程 教授 一柳 廣孝 先生

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民俗学/宗教学/文学

メッセージ

霊の研究はとても魅惑的で、奥の深いテーマですが、あまりにも広い世界なので、どの分野からアプローチするか決めた方がいいでしょう。文学、民俗学、宗教学、文化人類学、社会学、さまざまな分野からアプローチできます。私の授業では、日本の近代文学のなかで霊がどのように扱われてきたかについて、教えています。日本では古来から、霊に関する伝承が全国各地に存在します。また霊は、絵画や能、歌舞伎、落語などにも影響を与えています。そう考えると、あなたも霊という存在を身近に感じることができるのではないでしょうか。

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横浜国立大学は、高い国際性と実践的な学問を尊重し、社会に開かれた大学をめざします。全学部の学生がひとつのキャンパスで学び、学部の垣根を越えた交流ができ、国立大学には数少ない経営学部も置かれています。新しい潮流を起こして21世紀の人類社会に貢献できるよう、社会からの要請を的確に把握し、国民から委ねられた資源を有効に活用しつつその活動を開放し、社会の期待に応えます。