大気圏と宇宙空間の狭間で、何が起こっているのかを観測するには?

大気圏と宇宙空間の狭間で、何が起こっているのかを観測するには?

高度100キロの世界を観測するには?

科学技術が高度に発展した現在でも、地球には人間の手がなかなか及ばない場所がまだたくさん残されています。例えば、地表を覆う大気圏の中でも、一般的な旅客機が飛ぶのは高度10キロくらいまでです。ラジオゾンデという観測気球を用いても、高度30キロ程度までしか観測できません。さらに上空、高度100キロ前後にある大気圏と宇宙空間の狭間にあたる場所は、従来のやり方では観測することが非常に困難で、ロケットで観測装置を打ち上げるなどの方法が試されていました。

流れ星のかすがたまっている場所

そこで注目されているのが、「ライダー(LIDAR)」と呼ばれる装置を利用し、この高度100キロの場所に向けて、地上からレーザーを照射して観測するという方法です。地球では、宇宙に漂う小さな塵が大気に突入して発光する流れ星が見られますが、大気圏と宇宙空間の狭間の一帯には、こうした流れ星のかすが滞留しています。ライダーを用いて地上からここにレーザーを照射すると、かすに含まれるナトリウムやカリウムなどの物質が光るので、その密度や一帯の温度が把握できるようになるのです。ロケットで観測装置を打ち上げる方法に比べると、はるかに低コストで済むというメリットもあります。

地球環境全体の変動の観測に役立つ

このライダーを用いた観測施設を、世界各地に設置しようとする動きがあります。日本でも、南極の昭和基地にライダーを持ち込んで観測する計画が進められています。地球上空の大気は、赤道付近から上昇して北極と南極に向かって下降するという流れで大きく循環していると言われていますが、ライダーを使って各観測地点のはるか上空の大気の状態を観測すれば、地球環境全体の変動の観測に役立つのではないかと期待されています。こうした観測技術によって、私たちの知らない世界がまた一つ明らかになろうとしています。

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東京都立大学 システムデザイン学部 電子情報システム工学科 教授 阿保 真 先生

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メッセージ

システムというのは、個々の要素技術が統合され、それが大きな力を発揮するものです。そのようなシステム技術者や研究者には、個々の技術の知識も必要ですが、全体を統合的にとらえ、分野横断的に考えることも求められます。高校生のあなたには、ぜひ幅広い分野の勉強をするとともに、なるべく多くの「遊び」や「冒険」を経験してほしいと思います。遊びもネットやゲームだけでなく、自然やたくさんの人、そして文化に触れるような、リアルな経験がよいです。将来きっと役に立つと思いますよ。

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