環境リモートセンシングでわかる自然破壊

環境リモートセンシングでわかる自然破壊

環境リモートセンシングで自然を観測

リモートセンシングとは、人工衛星や航空機などを使って、対象に直接接することなく、一定の距離をおいて観測を行うシステムのことです。広域にわたって、リアルタイムでさまざまな情報を得ることができるのが利点です。中でも環境リモートセンシングは、地球上の環境変動(植生、土地利用、砂漠化など)を観測するのに使われています。
例えば、保護対象になっている動物に首輪をつけて、そこに衛星への発信機(PTT)センサーをつければ、人工衛星でリアルタイムにその行動を把握することができます。それに別の衛星からモニタリングした植物の分布状況のデータを重ねると、動物の餌資源の利用に関わる動きも把握できるのです。
遠く離れた土地でも、広い範囲での環境観測ができる画期的なシステムとして注目されています。

自然破壊から起こった黄砂の被害

1999年あたりから、北海道にも黄砂が見られるようになりました。この原因も環境リモートセンシングで解明できます。
もともと黄砂は、中国の黄土高原やタクラマカン砂漠が主な発生地でしたが、今問題になっている黄砂は発生地が内モンゴル地域に北上し、移動してきています。内モンゴル地域では、実際に家が埋もれるほどの砂漠化や黄砂の被害が観測されています。これには内モンゴルが政策によって、伝統的な遊牧生活から定住生活に変化したことが主な原因と予測されます。定住化すると1年中同じ場所で羊を飼育するため、単位面積あたりの餌や運動量において過放牧の状態になってしまうのです。実際に環境リモートセンシングで植生の分布状況を見てみると、内モンゴルとモンゴルの国境線を境に、雨の少ないモンゴルの方が、雨の多い内モンゴルより緑が多い状況になっていることがわかりました。
しかも、この黄砂には汚染された川が乾いてできた汚染物質を含んだ砂がまじっており、人体への影響も計り知れません。
従来の仕組みや機能を人為的に壊して失った自然は、もうとり戻せません。少しでも回復する対策が望まれます。

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酪農学園大学 農食環境学群 環境共生学類 教授 星野 仏方 先生

酪農学園大学 農食環境学群 環境共生学類 教授 星野 仏方 先生

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メッセージ

環境問題は国境を越えて起こっているものです。ですから個人だけで解決できるものではありません。環境問題に関心があるのなら、まず広い心、優しい心をもって臨んでください。人類のため、地球のため、そして生命、生物のためというものの見方が必要です。人間を中心とした環境問題だけでは、もう追いつかないところまで現状は来ています。いくら無視しても黄砂は襲ってきますし、南極大陸の氷が溶け出し、海の水位は上がっていくのです。ですから、広い視野を持って、優しい心で地球のことを考えていくことが大切なのです。

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北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。