東日本大震災による被害から、砂浜の絶滅危惧種の植物を救え!
東日本大震災の津波で、植物に大きな影響
東日本大震災後、沿岸被災地では、津波被害を受けた砂浜や砂浜特有の植物の現況調査が始めに行われました。地震による地盤沈降の影響から、砂浜がなくなり、生育地自体がなくなった地域があることが空中写真の分析や現地調査からわかってきました。特に岩手県南部では、海浜植物が多数生育している海岸は数カ所しか見つからず、普通の海浜植物の生育も危ぶまれている状況です。さらに、復興工事によって海浜植物が大きな影響を受ける可能性がある場所も見つかってきました。
海浜植物保全の活動と成果
そこで海浜植物の保全活動が開始されたのです。対象地は、野田村十府ヶ浦、山田町船越、陸前高田市広田の砂浜です。どちらの砂浜も海浜植物が豊かで、絶滅危惧植物も確認された海岸です。砂浜に見られるすべての海浜植物の保全を目標に、現地の海岸での保全、根や種子を含んだ砂ごと仮移植、種子からの苗の生産、一時的に遠く離れた場所に避難させる保存、そして種子の保存という、5つの取り組みがスタートしました。
いずれの手法も先行する事例が多くない中での取り組みであり、失敗できないという緊張感のある試みでした。特に種子からの苗づくりについては、発芽方法が未知の種類も多く、さまざまなパターンを実験し、試行錯誤が繰り返されました。その結果、ほとんどの種類で発芽方法が解明でき、苗づくりが軌道に乗っています。
また、現地保全区や仮移植した場所でも、多くの海浜植物が見られるようになり、これらの手法も成功したといえる状況になってきました。
海浜植物の保全を環境教育にも利用、そして砂浜へ
いずれの砂浜でも近隣の小学校の児童に海浜植物の苗づくりに参加してもらうという環境教育の場として利用されています。このように地元を巻き込んだ活動も積極的に行われているのです。
海浜植物の保全活動は、復興工事が終了した後に、保全した植物を砂浜に戻し、これらが健全に生育して植生が維持していくことが最終目標になります。砂浜に戻した後も、長い間調査が必要になります。
参考資料
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岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 教授 島田 直明 先生
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