乾燥地で農作物を作るための、画期的な仕組みとは?
乾燥地の地下水には塩分が多い!
世界の陸地の約40%が乾燥地です。植物が育ちにくい乾燥地に住む人々は、食料不足に悩んでいます。乾燥地は降雨量が少ないだけではなく、植物が育ちにくい理由のひとつとして、「地下水に塩分が多い」ことが挙げられます。この水を直接、畑にまくと塩害が起こり、作物の生育が悪くなるのです。このような乾燥地で、食料を生産する研究が進められています。
魚を利用して農作物を作る?
まず、乾燥地の水を使って、魚やエビを養殖します。塩分を含んだ水の中でも、耐えられる種類の魚やエビです。飼育に使われた水の中には、魚やエビの排泄物やエサに由来する窒素やリンが残されます。窒素やリンは作物の養分になりますが、塩分の濃度は変わりません。
次にこの水の中で、好塩性作物といって、塩分を吸収して生育することができる特殊な作物を水耕栽培します。好塩性の作物には、フダンソウ、スアエダ・サルサ、コキア、テーブルビート、サリコルニアなどがあります。すると、水の中の窒素、リン、そして塩分をこの作物が吸収してくれるので、最終的にきれいになった水は畑に利用できます。それによって、土壌の塩分濃度を下げるのです。
環境保全にもつながる技術
こうした、魚の養殖(Aquaculture)と水耕栽培(Hydroponics)をくっつけた生産システムを「アクアポニックス(Aquaponics)」と呼びます。このシステムを活用することで、水の効率的な利用ができるのです。さらにアクアポニックスは、太陽光パネルと組み合わせると、電気が通っていない地域でも試みることができます。広い地域でアクアポニックスを行うことができれば、食料生産に困っている乾燥地の人々の役に立ちます。
こうした取り組みは、農作物に関する研究者だけではなく、土壌学や水、塩、魚などの専門家といった、さまざまな分野の人々との協力によって進められているのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 農学部 生命環境農学科 国際乾燥地農学コース 教授 山田 智 先生
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