マンガやアニメの中に流れる中国人の精神
中国人のファンタジーの境界線
1920~30年代にアメリカで生み出された何をされても死なない、現実にはありえない動きで笑いを誘うマンガのキャラクターは世界的な人気を博し、中国にも輸入されました。その際、表現に不思議なアレンジが加えられています。例えば「子どもが細い筒を使い2匹のトラを生け捕りにする」という描写が、捕まえるトラを1匹だけに減らされているのです。動物の擬人化というファンタジーは受け入れられるのに「小さな子どもが大きなトラを2匹も運ぶ」ことは受け入れられない、当時の中国人にはそういう「身体的なウソ」への抵抗感がありました。
アジア初の長編アニメは中国産!
やがてハリウッドで盛んに作られ始めたアニメに刺激され、中国でも『西遊記』の人気エピソードを描いた映画『鉄扇公主』が製作されました。スタッフ自身、『ポパイ』を製作したフライシャー兄弟を意識したことは認めるところですが、ディズニーや『ベティ・ブープ』を彷彿とさせるキャラクターなど、アメリカのカートゥーン文化全体から影響を受けていたと言えます。また『白雪姫』への対抗心から、自分たちもお姫様(公主)を描こうという意図もあったようです。いずれにしてもこの作品はアジア初の長編アニメで、手塚治虫にも影響を与えたと言われています。
オリジナルアニメ作品は中国人の誇り
現代の中国人は「身体的なウソ」への抵抗感もなくなり、日本人と同じようにマンガやアニメを楽しんでいます。模倣やコピーのイメージが強い中国ですが、オリジナルを作ろうという動きも時代ごとにあり、1961年には国を挙げ『オタマジャクシ、お母さんを探しに行く』という水墨画アニメが製作されました。2015年には『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』という3Dアニメが作られ、大ヒットしています。中国人も「パクリ」と批判されることへの反動があり、外国の影響を受けず独自で作ったことで、これらの作品に誇りを持っているようです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 人文学科 教授 佐々木 睦 先生
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