ファッションも立派な文化遺産である

ファッションも立派な文化遺産である

モダンガールのイメージと実像は違う?

日本で成人女性の洋装が大衆化されていったのは、1920年代から30年代にかけてです。この時代には、モガ(モダンガール)と呼ばれる都会的な装いの女性たちが登場し、社会的にも注目を集めました。多くの人たちがモガという言葉で思い浮かべるイメージは、おそらくボブヘアーの髪形で膝まであるワンピースを着た洋服姿の女性でしょう。ところが当時の資料や証言をよく調べてみると、洋装をしていたモガは実はかなり少なく、多くの人は着物と洋服を組み合わせた和洋折衷の着こなしをしていたことがわかりました。現在、私たちが持っている、「モガ=洋装」というイメージは後の時代になってから作り上げられたものであり、当時の実像とはズレがあるのです。

ファッション研究も重要な学問

美術や建築は研究が盛んな分野として知られ、作品は美術館などで収集・保存の対象となっています。それに対してファッション史は、美術史や建築史と似ているにもかかわらず、これまで研究があまりなされてきませんでした。現状では大学の家政学部など、一部の教育機関での研究にとどまっています。ファッション史やファッション文化研究も学問であることをまずは多くの人に認識してもらい、学術的な視点から研究を進めていくことが、ファッション研究の大きな課題となっています。

アーカイブを作って歴史から学ぶ

海外に比べると日本では「アーカイブ」が軽視されがちで、とりわけファッションの分野では出遅れています。しかし美術と同じように、ファッションもまた文化遺産の一つなのです。今の日本では歴史を遺産にして将来の糧にするという意識が十分に育っていませんが、歴史というのは大きな財産です。それに気づいているヨーロッパのブランドは、アーカイブ活動を通じて自身の権威付けを行っています。ファッションも文化遺産であるという意識に基づき、埋もれた資料を掘り起こしてファッション文化をアーカイブすることは、新しいデザインや将来の活動にもつながるのです。

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先生情報 / 大学情報

京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 准教授 本橋 弥生 先生

京都工芸繊維大学工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 准教授本橋 弥生 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

ファッション史、デザイン史

先生が目指すSDGs

メッセージ

ファッションの研究は探偵の仕事に似ています。歴史の中で忘れ去られてしまったものを丹念に調べて掘り起こすことで、新しい知見を得られたり、ときには通説を覆す事実が明らかになったりと、発見が多いことが研究の醍醐味(だいごみ)です。美術やファッションなどよいものを見る目は、若ければ若いほど身に付きます。感受性が一番豊かな高校生のうちに、ぜひいろいろなものを見て、体験してほしいです。好奇心を大切にして日々を過ごし、好きなものを見つけてそれを思う存分追究してください。

京都工芸繊維大学に関心を持ったあなたは

歴史都市京都にあって、本学は、伝統文化や伝統産業との深い結びつきを背景に、工芸学と繊維学にかかわる幅広い分野で常に先端科学の学理を探求し、「人に優しい実学」 を志向する教育研究によって、広く産業界や社会に貢献してきました。さらに、本学は、長い歴史の中で培った学問的蓄積の上に、感性を重視した人間性の涵養、自然環境との共生、芸術的創造性との協働などを特に意識した「新しい実学」を開拓し、伝統と先端が織りなす文化を創出する「感性豊かな国際的工科大学」を目指します。