講義No.06191 経済学

中国経済はわかりにくい! それでも世界は目が離せない

中国経済はわかりにくい! それでも世界は目が離せない

キーワードは「不確実性」

中国経済はいまや世界経済に大きく影響する存在ですが、その特徴は「わかりにくさ」「不確実性」にあると言えます。理由は複数あります。1つには、統計の信ぴょう性の問題が挙げられます。例えばGDP(国内総生産)については、中国全体の統計と地方ごとの統計が食い違っています。地方の幹部が自分のところの成長を高く見せるために粉飾をしていると考えられています。客観的なはずのデータがそのように不確実であると、それ自体がリスクや、わかりにくさへとつながっていきます。

実態の見えない中国版「影の銀行」

もう1つは、中国の経済システムが極めて独特であることです。それは「影の銀行」の存在に代表されます。「影の銀行」とは、銀行のようなお金の貸し借り業務を行う銀行以外の金融機関全般のことを指します。同様のものは欧米にもありますが、中国では、銀行自身が本来の業務とは切り離して、「影の銀行」としての業務を表に出さないようにしてやっているという点で独特です。これはリーマンショック後に広がっていったものですが、いまやそれがどのくらいの規模なのか、実態は誰にもわかっていません。

不確実性は必ずしもマイナス面ばかりではない

難しいのは、「影の銀行」のような不確実性を生み出す要素が、単純になくすべきものとは言い切れないところです。これらが中国の成長率を押し上げ、経済を引っ張ってきた側面もあるからです。中央政府(国)は「影の銀行」を規制し、目に見える形で金融をコントロールしたいと考えていますが、逆に、地方政府は「影の銀行」と結びつき、資金源として頼っているところも多くあります。中国経済の成長が鈍ってきた昨今、「影の銀行」が今後どうなっていくかに注目が集まっています。いまやGDP世界第2位の中国で、なんらかの動きがあれば、すぐに世界中に影響がおよびます。わかりにくいからといって、ただ眺めているわけにはいかない存在になっているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神戸大学 経済学部  教授 梶谷 懐 先生

神戸大学 経済学部 教授 梶谷 懐 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経済学、地域経済学、中国経済論

メッセージ

私が専門にしているのは中国経済論です。中国の経済を考えるということは、広い意味で地域経済という学問分野に入ります。経済をテーマにするとはいえ、経済だけではなく広く社会や政治とのかかわりを考えていく必要があります。例えば、尖閣諸島の問題で中国国内で反日暴動が起こりましたが、その背景には、中国国内の格差の問題があると言われています。中国の経済について勉強するのみならず、より広い視野でさまざまなことに関心を持って勉強していってもらいたいと思っています。

神戸大学に関心を持ったあなたは

神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。