マッチング理論で待機児童の解消を
保育園に入りたいけれど
保育園に申し込んだのに入れない子どもを指す「待機児童」は、一時大きな社会問題となりました。待機児童問題の原因には、保育士不足などの供給側のキャパシティの事情もありますが、供給は足りていても「希望する園に入れない」という問題も見られます。そこで役立つと考えられるのが、経済学の中の「マーケットデザイン」の知見です。そこには、資源や人を最適な形で配分するための「マッチング理論」があり、それを使って人と人や、人とモノを最適に組み合わせる仕組みを考えていくのです。
入園さえできればいいのか
認可保育園は、保護者からの入園の希望を自治体が一括で管理し、保育園を割り当てます。割り当てる際には保護者の「年収」「フルタイム勤務か」「シングルか」「きょうだい児がいるか」といった項目が考慮されます。一方、保護者側も「送迎がしやすいか」「園の保育方針」などの好みがあり、単に入園できればいいというわけではありません。
近年、現実のさまざまな制約を踏まえた「制約付きマッチング」の理論が議論されています。その中で、保育園側の制約を踏まえた柔軟な対応が組み込まれたアルゴリズムが開発されました。例えば、応募が少ない5歳児の受け入れ人数枠を、応募が多い1歳児向けに、年齢の違いによるさまざまな制約を踏まえながら、振り替える対応などが組み込まれています。こうした工夫により、待機児童が減るだけでなく、保護者の満足度の向上も期待されています。
よりよい社会のために
マッチング理論は1960年代からアメリカを中心に研究されていましたが、社会実装に向けた検討が始まったのは1990年代後半からと新しく、研究も活発です。現在では学校選択、感染症のワクチン接種の予約管理や、企業の新入社員の配属、臓器ドナーの有効活用などにもマッチング理論によるマーケットデザインが実装されつつあります。限られた資源を最適な形で配分することで人々の満足度やパフォーマンスが上がり、よりよい社会の実現につながっていくのです。
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