省エネで飛行機を飛ばすには? 鳥に学ぶ省エネ飛行

省エネで飛行機を飛ばすには? 鳥に学ぶ省エネ飛行

楽をして飛ぶ渡り鳥

走って移動するとき、「疲れたくない」「近道をしたい」と考えませんか。鳥の飛行にも、楽をするための工夫が見られます。例えば、渡り鳥が1羽を先頭にしてV字を作るように並んで飛ぶ「V字編隊飛行」です。飛行中は、翼の先端から回転する空気の渦が後方に流れ去っていきます。渦の外側には上向きの風が発生するため、これを利用すると空気抵抗が減り、飛行が楽になります。つまり前を飛ぶ鳥の斜め後ろにいると、1羽だけで飛ぶときよりも体力を温存できるのです。

V字編隊飛行の負荷

V字編隊飛行では、先頭の鳥がもっとも体力を消耗します。これを解消するために、V字編隊飛行をする群れでは先頭を飛ぶ鳥が定期的に交代していることがわかりました。後ろで体力を温存していた鳥が前に出て、負担の多い先頭を順に引き受けるのです。これをくり返すと個々の負担がほぼ均等になるため、編隊飛行は群れ全体が省エネになるための工夫だと考えられます。

航空機の省エネに貢献

鳥が群れるメカニズムは、「近づきすぎたら離れる」、「離れすぎたら近づく」、「群れ全体が向かう方向へ行く」という3つの法則をプログラムに盛り込むことで、コンピュータシミュレーションで再現できました。さらにこの法則を応用した航空機の編隊飛行制御シミュレーションでも、鳥のように振舞う航空機の編隊飛行制御が可能であることがわかりました。このメカニズムに空気力学的な要素をプラスしてV字編隊飛行を行えば、燃費が改善して排出ガスを削減できる可能性があります。2021年に2機の旅客機が編隊を組み、フランスからカナダまで飛行する飛行実験が行われました。その結果、約6トンの二酸化炭素の排出を削減し、約5%燃費が改善しました。
このように編隊飛行の空気力学や編隊飛行制御を組み合わせれば、より効率の良い航空機の飛行法が見つかるかもしれません。

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崇城大学 工学部 宇宙航空システム工学科 教授 河邉 博康 先生

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航空宇宙工学

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メッセージ

研究のヒントは世の中にたくさん存在し、それに気づくかどうかが研究者としての腕の見せ所だと思います。大学で研究するなら、あなたもなんとなく景色を眺めるのではなく、「おもしろそうなものがありそうだ」と広く自然界に目を向けて、学んだ知識と世の中のニーズを結びつけるためのアイデアを常に考えてほしいです。航空宇宙工学なら、さまざまな分野を学べるので、学んだことを広く応用できると思います。進路の幅も広がるので、ぜひ航空宇宙工学に関心を持ってほしいです。

崇城大学に関心を持ったあなたは

崇城(そうじょう)大学は薬学、生物生命、工学、情報、芸術の5学部からなる総合大学です。“世界で活躍できるプロフェッショナルの育成”を目指し、最先端の施設・設備・研究を備え、学生一人ひとりを厳しく育てる実践的な教育プログラムにより、高い就職率や国家資格合格率を維持しています。理系私立大学では全国初の英語を公用語とする学習施設「SILC(シルク)」があり、英語ネイティブ講師による英語教育が成果を上げています。本学の地である熊本から産業界の未来を切り拓く若者を輩出する学舎でありたいと決意しています。