スマホから環境まで 光を自在に操る分子の研究!

光を変換する分子たち
化学の研究分野の中でも光化学は、太陽光などの光エネルギーを化学エネルギーや他のエネルギーに変換する現象を扱う分野であり、近年では太陽光などの弱い光エネルギーを効率的に利用するための分子設計が進められています。光が分子にあたり、その分子が特定の波長の光を吸収すると、発光を起こしたり、エネルギーや電子を他の分子に移動させたりすることで、さまざまな化学反応を誘起することができます。
変換して何に使うのか?
このような機構は、自然界の光合成にも見られます。光合成では、植物の光捕集アンテナが太陽光を吸収し、そのエネルギーを反応中心へと効率的に移動させ、最終的に水の酸化や二酸化炭素の還元といった化学反応を駆動しています。
こうした光エネルギー変換の原理は人工光合成や光触媒、水分解、またエレクトロルミネッセンス材料の開発にも応用されています。例えば、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)ディスプレイは、有機分子が電気エネルギーを受けて発光する性質を利用しており、これらの知見が不可欠な技術です。
基礎研究から製品まで
この研究は原子や分子レベルで発光の現象を詳しく、丁寧に解明することから始まります。これは基礎研究と呼ばれ、新しい発見の源となるものです。分子を設計して、その分子が正しくできているかを確認し、特性を評価し、新しい発見があると、実用化に向けた開発は企業などが進める場合がほとんどです。例えば発光材料の研究が、生物学の分野で細胞や分子を可視化する技術として活用されています。また、環境問題への対応として、太陽光を効率よく変換する材料は再生可能エネルギーの分野でも注目されています。時には研究者が予想もしなかった用途に使われることもあります。このような基礎研究は、一見すると実生活から遠く見えますが、私たちの未来の技術革新に不可欠な基盤となっているのです。
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先生情報 / 大学情報

長崎大学工学部 化学・物質工学コース 教授作田 絵里 先生
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