自然の力を引き出して、安全で暮らしやすい地域をつくる
市街化が進み、多発する水害
近年、日本の各地で水害が多発しています。その原因として考えられるのは、「市街化」と気候変動による豪雨の増加です。コンクリートで覆われた市街地は、土とは異なり、雨水が地面にしみこんで地下水として涵養されることなく、雨水管を通じて河川へと排水されていきます。川に雨水が集まりすぎてしまった結果、氾濫被害が起こりやすくなっています。
世界で注目されるグリーンインフラ、NbSとは?
水害を防ぐために、これまでは堤防を築いたり川幅を拡げることで治水を行ってきました。しかし、想定以上の豪雨に対処するためには、流域全体を対象に、浸透や貯留対策を進めていく必要があります。また、昨今は、欧米を中心に世界で「グリーンインフラ」や「Nature based solution( NbS)」が新しい社会基盤の整備方法として着目されています。グリーンインフラとは、自然環境が本来もっている力を引き出し活用することで、自然災害などの問題を解決していこうとする考え方です。道路や建物などに降った雨水を集めて地面に浸透させる「雨庭」をつくったり、谷地にある休耕田を再湿地化することで生物の生息場の再生に加え、雨水を貯留する場所として活用するなどの取り組みが進められています。田んぼダムの取り組みも各地で進められ、地下水涵養にも貢献しています。これまでは開発対象としてしか見られていなかった「湿地」が天然の遊水地として大きな役割を果たしていることにも注目が集まっています。
安全で暮らしやすい地域づくりに貢献
こうしたグリーンインフラを進める上で、土木工学の知見が大きな役割を果たしています。土木工学では、河川氾濫のシミュレーションを行えるほか、生態系の調査も実施しながら、人々が暮らす地域のあり方をデザインして、そこに生息可能な生物の状況なども予測が可能です。豊かな自然環境を守り、その力を引き出しながら安全で暮らしやすい地域をつくることに直接貢献できるのが、土木工学という学問分野なのです。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 土木建築学科 教授 皆川 朋子 先生
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環境保全学、河川工学、土木工学先生が目指すSDGs
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