災害に強い建物をつくるなら「風」を忘れるな!

災害に強い建物をつくるなら「風」を忘れるな!

風は物を巻き上げるように流れる

台風などで強い風が吹くと、物は押さえつけられるイメージがあります。しかし、実際は巻き上げるような力が働くため、家屋の屋根瓦が浮かされ、飛ばされてしまうのです。瓦自体は耐久性が高く、破損や紛失した際はそこだけ交換すればいいため、部分的な補修がしやすいのが利点です。昔の家はそれを前提に予備の瓦を床下に積んであったものです。しかし、飛んだ先での被害が問題になってきたことから、2018~19年の台風被害を機に、それまでは何枚かごとに止め付ければいいとされていた瓦を1枚ずつ止め付けることになりました。最近では「防災瓦」といって、隣同士の瓦を組み合わせ、飛びにくくしている瓦もあります。

高い建物ほど耐風設計は重要

地震が骨組に影響を与えるのに対し、風は外装材に影響が出やすいため、耐久性の高い素材にしておくことも大切です。戸建て住宅では、屋根や壁などをきちんと留め付けておくことがポイントです。むしろ耐風設計に工夫が必要なのは、大きな建造物です。風は上空の方が強く吹くことから、高層ビルやタワーのような高い建築物ほど風への対策を考える必要があり、タワーマンションなどは強風で揺れることがあるので、居住性にも大きく関わります。

台風や地震に強いだけじゃつまらない

風は建物の周辺を通るとき、角で剥がれるように流れて行きます。従って、角を丸めたり、切り欠きをつけたりすることで、建物にかかる力を軽減することもできます。風の動きは複雑で、わずかな形の違いで風の流れは変わり、建物の揺れ方も変わります。隣り合う高層ビルでも揺れ方は違いますので、もし双方を接続するなら、その部分をどう作るかも考えなければなりません。また台風や地震のような建物を揺らす現象に対抗するには、振動を抑える減衰装置「ダンパー」も工夫のポイントです。一方、建物は見た目も重視されます。耐風性、耐震性だけでなく、デザイン性とのバランスが取れた建物が求められるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

熊本大学 工学部 土木建築学科 教授 友清 衣利子 先生

熊本大学 工学部 土木建築学科 教授 友清 衣利子 先生

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耐風工学、建築構造力学

メッセージ

建築の道を志すのであれば、さまざまな建物を見るときにどうしてそういうデザインになったのか考える癖をつけておくといいでしょう。一見変わった見た目でも、建物の重さをうまく支えたり、風雨や地震に耐えたりするため、何らかの力学的な理由に基づいて工夫された形や作りになっていることもあります。多くの建築を知っておくと、いずれ自分の中の引き出しとして生きてきます。数学や理科も含めて、今、勉強していることが建築分野にもとても重要であることに気づくはずです。

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熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。