EDAが開く半導体革命 設計自動化の最前線

EDAが開く半導体革命 設計自動化の最前線

電子機器の進化を支えるEDA

半導体技術の急速な進歩により、ICチップ上のトランジスタ数は数千個から数百億個へと増加しました。この集積度の向上は現代のデジタル機器の高性能化を可能にしていますが、同時に設計の複雑さも高まっています。1970年代には数千個のトランジスタの配置と配線を手作業で設計していましたが、数百億個にもなると人手で設計するのは不可能です。そこで重要となるのが「EDA」と呼ばれる半導体設計の自動化技術です。

設計期間を劇的に短縮

EDAツールの進化により、半導体設計の効率は劇的に向上しました。例えば手作業で数カ月かかる設計プロセスが、最新のEDAツールを使用すれば数日や数時間に短縮されることも珍しくありません。この技術革新により、大手半導体メーカーは、製造を外部委託して革新的な設計に特化することで競争力を維持しています。
ICチップの設計には、トランジスタレベルから論理ゲートレベル、さらに高次の抽象化レベルまで複数の工程があり、それぞれの工程に対応したEDAが開発されています。抽象化レベルが高くなるにつれて、半導体設計の専門知識が少ない開発者でも高度な設計が可能になると期待されています。

AIとEDAの融合が開く新時代

EDAツールの進化により設計期間は大幅に短縮されましたが、それだけでなく、高性能かつリソース使用を最小限に抑える設計を可能にすることも重要です。EDA研究の最新成果の一つとして、ループ処理を最適化して、ニューラルネットワーク処理におけるメモリ使用量を250分の1に削減する技術が挙げられます。この技術により、AI用のチップの性能を飛躍的に向上させることができます。現在、さらなる革新をめざして大規模言語モデル(LLM)を活用した設計自動化の研究が進められています。
こうしたEDAの性能向上のための研究は、高度な数学的アプローチとコンピュータサイエンスを融合させて複雑な最適化問題に挑戦する、学際的な分野となっています。

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先生情報 / 大学情報

熊本大学 情報融合学環  准教授 瀬戸 謙修 先生

熊本大学 情報融合学環 准教授 瀬戸 謙修 先生

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情報工学、計算機システム

メッセージ

幼少期や小中高の頃からの好奇心や興味を大切にして、チャレンジし続けることが大切だと思います。その頃から不思議に思っていることや、必要がなくても自分から進んでやってみていることが何かしらあるでしょう。ふわっとした関心でも構いません。自分の手でそれを調べてみたり、試しに作ってみたりすることが、大学での学びに生きてきます。途中で「ちょっと違うな」と思っても、無駄にはならずにどこかでつながるものです。インターネットや本などの情報源を活用し、自分の手を動かして、学びを深めてみてください。

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熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。