実は相性が良い? ポップカルチャーと日本の皇室

実は相性が良い? ポップカルチャーと日本の皇室

移り変わる天皇のイメージ

今でこそ皇室ご一家といえば、「親しみやすい」イメージがあります。しかし国民から見た天皇や皇室に対するイメージは、時代ごとにかなり変化しています。例えば江戸時代の天皇は人びとの前に姿を見せない存在でした。それが近代に入ると姿を見せるようになり、大正時代後半にはさらに親しみやすいイメージが展開します。当時は世界各地で王室が倒れ、国内では大正デモクラシーに代表されるような民主化の流れが生まれて、社会が大きく変化した時期です。皇室はそんな危機的ともいえる時代を生き抜くための戦略として大衆化の道を選び、皇室は親しみやすい姿を示すようになったのです。しかし戦争に突入すると、再び神のような存在へと変化します。

親しみやすさと神秘性

戦後、天皇は日本国憲法の下で「象徴」という存在になりました。特に現在の上皇は、象徴であるがゆえに政治的発言ができないことや、高齢であるにもかかわらず全国を巡る姿を国民に見せました。天皇は決して万能ではないこと、そして庶民に寄り添うことで、「親しみやすい」イメージの醸成に成功しました。この親しみやすさと併せ持っているのが、「スピリチュアル」なあり方です。令和に改元したときの即位礼正殿の儀の際に、急に雨が止んだことや、皇居の空に虹がかかった現象を見て、スピリチュアルな想像力を働かせた人も多くいました。この親しみやすさとスピリチュアリティとの相性が良いのが、現代のポップカルチャーです。

国民と共にあること

すでに上皇を主人公にした漫画本は多数あり、さまざまなイメージで描かれています。そもそも現在の天皇も若い頃からマンガや特撮などのポップカルチャーに親しんできたことが知られています。日本のポップカルチャーは今や海外でも知名度を誇っています。現在も皇位継承は危機に瀕していますが、そのなかで国民と共にあることや大衆的な文化に寄り添うことはさらに皇室にとって重要なものとなっていくでしょう。

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東北大学 文学部 日本学専攻 准教授 茂木 謙之介 先生

東北大学 文学部 日本学専攻 准教授 茂木 謙之介 先生

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表象文化論、日本近代文化史、メディア史

メッセージ

私は学部で歴史学、マスターで宗教学、ドクターで表象文化論を学ぶ中で、長い迷いの時期を経験しました。無駄で苦しい時間だったとも言えますが、同時に楽しく貴重な時間でもありました。大学とは、好きなものに好きなだけ取り組む時間を過ごせる場所です。また大学では学内外にかかわらず、たくさんの人と言葉を交わしてほしいです。無駄にも感じるかもしれませんが、それで良いのです。タイムパフォーマンスなど関係なく無駄を楽しめるのが人間ですし、そこには得難い何かを獲得できるきっかけがたくさん潜んでいます。

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建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。