支援はほどほどがいい? 人の力を引き出すロボット開発
ロボット開発の変化
従来の支援ロボットは、人間の動作をすべてサポートするものが多く作られていました。しかし未来に向けた研究では、ロボットによる支援をあえて制限しようとしています。例えば脚が不自由な人に向けた支援ロボットでは、車椅子のように脚のすべての動きをサポートしてしまうと、そのロボットを利用する人の脚はますます衰えるかもしれません。歩くときにバランスを崩しやすいのであればバランス保持だけを補助するなど、必要な部分だけを支援し、人の残存能力を活かすことが大切だと考えられています。
こうした観点を重視して開発された「足こぎ車椅子」は、自転車のようにペダルを踏んで使います。脚の不自由な人や脚力が弱い人でも比較的簡単に動かせるため、利用者が「自分の脚はまだ動く」と自覚し、積極的に行動したくなることがわかってきました。
自己効力感を高める
ある物事に対して「自分はこのくらいできる/できない」と認識することを、自己効力感といいます。自己効力感が低いと「できない」と思ってしまい、物事に取り組むことに対して消極的になりやすいです。もしロボットの支援によって自分の持つ能力に気づくことができれば自己効力感が高まり、物事に積極的に挑戦するようになるかもしれません。
ロボットの連携で介護を支援
2050年を見据えた「ムーンショット型研究」では、日常生活のあらゆる場面で人を支援するロボットが開発されています。特にロボットの支援が必要だと考えられている分野が介護です。すでに介護ロボットは登場していますが、立ち上がりや入浴など単一の目的に対してのものです。1台で介護すべてを行うロボットを作ることは難しいですし、過剰な支援は自己効力感向上の妨げになる恐れがあります。
そこで複数のロボットをIoTで連携させ、介護を支えるシステムの開発が始まりました。例えば高齢者が立ち上がろうとするとき、ベッドが高さや角度を自動で調整し、スマートスピーカーで呼んだ歩行器ロボットが移動を補助する、といった連携が実現するかもしれません。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 教授 平田 泰久 先生
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