ロボットにも道徳は必要? ロボット倫理学から考える技術との共生
身の回りにはロボットがたくさん
ロボットと生きる社会、と言われるとSF的な世界を想像するかもしれませんが、私たちの身の回りにはすでに多くのロボットたちが働いています。そしてその裏側には人間とロボットの協力関係が存在するのです。
たとえば、ファミレスではネコ型のロボットが食事を運んでくれることがありますよね。でも、配膳ロボットから食事を受け取るのは人間です。また、ロボットは走行時に私たちを感知して止まりますが、人もぶつからないよう配慮しています。このようにロボットは、ロボット単体ではなく人間との協力関係の上で「ロボット」として成り立っているのです。
「ロボット倫理学」の必要性
だからこそ、ロボットやAIがどう動き、判断すべきか、ということについても現実の問題として考えなければなりません。実際、あるAIがSNS上で行った「発言」が社会に大きな影響を与えてしまうケースも発生しています。一部のユーザーが悪意のある言葉を覚えさせ、AIはその言葉を使うようになってしまったのです。ロボットやAIが人間とよりよい形で共生するためには、ロボット側の「倫理」が必要です。
このように、ロボットとのよりよい共生の道を哲学的に考える研究分野が「ロボット倫理学」です。この分野ではもちろん、ロボット・AIだけでなく、人間側に求められる規範についても考えます。
ロボット倫理学から「人間」側を考える
ロボット倫理学は、実は人間のあり方を問い直す試みでもあります。たとえば、「トロッコ問題」のような状況で自動運転車はどちらにハンドルを切るべきでしょうか。「ロボット・AIにはこう考えてほしい」や、「これは違うのでは」と考えることは、私たち人間自体の道徳や倫理のあり方について見つめ直す機会にもなります。
ロボットの倫理を検討することは、結局「私たちはどう生きるべきか」という点に行き着きます。この分野の研究は始まったばかりですが、ロボット・AIが急速に進歩する今だからこそ、重要で刺激的な分野だと言えます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。