依存・嗜癖の心理 -薬物依存からスマホ依存まで-
脳の神経回路「報酬系」に影響
薬物依存やアルコール依存など、依存にはさまざま種類があります。薬物やアルコールは、脳内にある「報酬系」と呼ばれる神経回路に影響を与えることがわかっています。報酬系が活動すると快感が得られ、薬物やアルコールを繰り返し求めるようになっていきます。脳科学の研究では、ギャンブルも報酬系に対して同様の影響があることがわかっています。
また最近は大麻などがネットやSNSで簡単に手に入るようになったことから、若い世代にとっても身近な社会問題になっています。薬物は使えば使うほど耐性ができてしまうため、同じ量では快感を得られなくなり、どんどん量が増えるとともに、覚醒剤などにエスカレートしてしまうこともあります。薬物依存が進むと、薬物を使用していない時でも、壁に大量の虫が這っている様子が見えるなどの幻覚症状が消えなくなる場合もあります。
「否認」の傾向が強い人ほど依存しやすい
これらの依存症に陥りやすい人には、「否認」の傾向が強いという心理的特徴が見られることが多いです。否認とは「現実を認めたくない」ということで、例えば病院でガンと宣告された時に「何かの間違いだ」と否定してしまうような心理です。このように望ましくない現実を見たくないという思いが強い人ほど、依存症に陥りやすく、また治療につながりにくい面があります。
スマホ依存も問題に
現在の受刑者の罪名で2番目に多いのは覚醒剤です。覚醒剤は再犯率が高く、覚醒剤の依存者をどのように減らしていくか、どうやって立ち直りを支援していくかは、大きな社会的課題です。
さらに最近は「スマホ依存」も社会問題になりつつあります。スマホ依存は、薬物やアルコールほど報酬系への影響が強くないように思われますが、誰もが陥りやすいという意味で社会的影響が大きい問題です。心理的な背景も含めて、そのメカニズムについてはこれから研究が進んでいくでしょう。
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駿河台大学 心理学部 心理学科 教授 古曵 牧人 先生
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