運動は本当に身体に良いの? 脳に与える影響を探る
運動と脳の関係
「運動は身体にいい」といわれていますが、それは本当でしょうか。また、具体的には身体のどの部分にいい影響を与えているのでしょうか。運動と身体の関係を明らかにするために、さまざまな研究が行われています。例えば脳機能との関係です。運動すると、学習や記憶力に関わる「認知機能」や、他者の感情を理解する能力である「共感性」などが高まることがわかってきました。これらの脳機能は、少し息が上がるような中強度の運動のみならず、散歩のように息が上がらない程度の低強度の運動でも高まることがわかってきており、有効な運動条件が明らかになりつつあります。
運動で高まる認知機能や共感性
運動と脳機能の関係を調べるために、ヒトのみならず小動物(マウスやラット)を用いた試験も行われています。その際には、学習・記憶機能を測る迷路試験、あるいは共感性を測る救助行動試験など、さまざまな行動試験を用いることで、脳機能がどのように変化したか評価されています。1日30分の低強度の運動を習慣的に行ったマウスやラットの場合、運動していないマウスに比べて迷路試験でのゴールタイムや救助行動試験でのドア開け行動までのタイムが短縮されることがわかっています。特に学習・記憶機能については、生活習慣病モデルのマウスやラットでも、低強度の運動の有効性が示されています。
体育授業で脳を育む
体育科、保健体育科の学習指導要領には、他者の考えや取り組みを認めたり、互いに助け合ったりすることなどが目標として書かれています。そのため体育教師はこの目標を達成できるような授業内容を考える必要があります。この目標達成を促せるような運動の内容やメカニズムがわかっていれば、教師は適した授業内容や教え方を考えやすくなるでしょう。体育の授業内容が子どもの脳機能にどう影響を与えているか、具体的にどのような授業を行えば脳機能が高まりやすくなるのかなどについては、さらなる研究を通じて突き止める必要があります。
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群馬大学 共同教育学部 保健体育講座 講師 島 孟留 先生
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