物理の力で、X年後の地球をシミュレーションしてみよう
物理学の視点で環境問題をとらえる
環境問題は現在、さまざまな学問分野で多角的な研究が進められています。物理学もその一端を担っており、例えば、地球温暖化というのはどのようなメカニズムで起き、どのような条件下で気温が上昇するのか、現象をモデリング(デザイン)し、シミュレーションを行うのは物理学の領域になります。
さまざまな条件でのシミュレーションが可能
大気圏にある温室効果ガスが増えるせいで、地球の温暖化が進むことはよく知られていますが、このガスや水蒸気が全くない場合を想定して数値シミュレーションを行うと、地球の気温がマイナス18度まで下がり、生命が育めなくなることは案外知られていません。シミュレーションを用いれば、温室効果ガスを構成する二酸化炭素やメタンなどの気体の濃度に応じて気温がどう変化していくか、また、地球を理想的な気温に保つにはどの程度の温室効果ガスが許容されるかなど、テーマに即して詳細な数値を出すことができます。
経済・環境・エネルギー問題を解決
もう一つ例を挙げると、温暖化の影響で北極海の氷が溶けることは環境保全の点から見れば大きな問題ですが、氷が減ると船舶の通行が可能になり、世界各国で貿易を行う大型船が北極海ルートで航海できるようになります。これは経済的にはコストダウンになり、メリットになるという考え方も出ています。しかし、重油を動力源とする船舶は黒い煤(すす)を大量に放出するため、北極海の凍土や氷を黒く染めてしまい、それが熱の吸収を促し、氷の溶解をさらに進める恐れもあります。ビジネスの機会をとらえつつ、同時に環境も守るためにはどの程度の船舶の通行が理想的なのかといったシミュレーション研究にも、物理学が役割の一端を担います。
大気汚染をはじめ、環境を脅かす問題は多々ありますが、地球規模で今起きている現象を把握するだけでなく、そこにさまざまな条件を加えながら未来を予測することに貢献する物理学は、私たちの生活を支えるうえでも非常に役立つ学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
明星大学 理工学部 総合理工学科 教授 櫻井 達也 先生
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