住宅と家族関係の相互関係
「人と人との関係性」が住宅に表れる
住宅の空間構成には、家族関係のあり方、ひいては社会的慣習が表れます。例えば、江戸時代の武士の住宅では、「家」としての格式を保つことや家長である主人の生活に重きが置かれており、家の大半の空間は客と主人のためにつくられていました。また、イスラム教国では、男女の居間を分けるなどの、性別によって空間を分離している住まいが多く見られます。古今東西のさまざまな住宅を観察すると、その時代・土地の人々の生活を読み取ることができます。
住宅が「人と人との関係性」をつくる
昭和戦後期から平成にかけての日本の典型的な住宅モデルは、nLDKで表現される住まいです。これは、家族がともに過ごすためのリビング・ダイニングと、夫婦の寝室・子ども部屋で成り立っています。このような典型的な住宅に挑戦するかたちで、多くの建築家は新しい住まいの在り方を提案してきました。個室の壁をとりはらい、家全体がゆるくつながっているような住まいや、各個室に玄関的な出入り口があり、外から直接アクセスできるような住まいなどです。このような家は、単に斬新さを狙っているのではなく、そこには家族の関係性の在り方に対する提案があります。脱個室化した住宅では、個室の単位が強い家とはちがった子育てや親子関係が生まれることが期待できます。このように、住宅の在り方は、家族の関係性に影響を及ぼすのです。
これからの住まいはどうなるのか
現在の日本では、すでに核家族モデルは崩壊しており、家族の在り方は多様化しています。東京では単身者世帯数が約半分を占めていますし、一人親世帯や子どものいない夫婦も珍しくありません。これに加え、少子化や長寿命化は人々の生活を大きく変えていくことが予想されます。さらには、外国人の増加や空き家率の増加も未来の住まいの在り方に影響を及ぼすでしょう。このような状況を踏まえて、未来の住まいはどうあるべきなのでしょうか? つくる人にも住む人にも、問いかけられた課題です。
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先生情報 / 大学情報
明星大学 建築学部 建築学科 准教授 高橋 彰子 先生
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