血液の検査で病気が防げる!
血液は情報の宝庫
今日、病気の診断や早期発見の強力なツールとして臨床検査は欠かせません。その1つに血液検査があります。全身を巡り細胞に触れてくる血液を調べれば、細胞に異常があるかの情報が簡単に得られるのです。欠点もいくつかあり、その1つは全身の細胞情報を持ってくるため「情報の出どころ」を見つけるのが難しいことです。そのため複数の検査項目を組み合わせて判断する必要があり、数は多く2,000項目を超えます。2つ目は、これまで「病態把握」と「早期発見」に多大な貢献してきたものの、将来の病気予測までは難しいことです。
血液中のDNA・RNAが異常を知らせる
そこで注目されているのが血液中に存在する遺伝子(DNA、RNA)です。私たちのからだはDNAにある遺伝子配列を読み取り、そのコピーであるメッセンジャーRNA(mRNA)という物質を介して必要なタンパク質をつくり出し生命活動を行っています。近年、「エピジェネティクス」と呼ばれる、「後天的に遺伝子発現が制御される現象」がさまざまな病気の発症に関係することがわかってきました。例えば、ある食習慣がエピジェネティックな変化である「DNAのメチル化」や「マイクロRNAの変化」をもたらし、将来に疾患発症のリスクを高める、というものです。この筋書きが正しければ、その遺伝子の変化をとらえることができれば病気の発症リスクが事前にわかることになります。それも血液検査だけでわかったら素晴らしいことです。
臨床検査技師の活躍に期待
こうした検査を行うのが臨床検査技師です。血液だけでなく尿や微生物など幅広い生体成分の分析のほか、心電図や超音波検査なども行っています。今後の医療は病態の把握や早期発見に加えて、事前に病気を予防する「予防医学」を視野に入れた臨床検査が中心になると考えられており、特に血液の分野では手軽に得ることができる便利さから期待が高まっています。このように生命科学の知恵を駆使し人に役立てるのが臨床検査なのです。
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藤田医科大学 医療科学部 医療検査学科 教授 大橋 鉱二 先生
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