医学と工学で人工透析の患者さんを支える
患者さんの生命を支える人工透析
腎臓は血液から不要なものを尿として排出し、体内の塩分バランスや水分量を調節する、人間にとって非常に重要な臓器です。腎臓がじゅうぶんに働かなくなり、老廃物の排出や体液バランスの調節がうまくできない状態を「腎不全」と言います。腎不全の患者さんには、腎臓の働きを機械で補う「人工透析」が必要です。人工透析では、半透膜でできた細いチューブの中に血液を、外に透析液を流し、チューブの半透膜を介して老廃物を取り除いたり、塩分バランスを調整したり、水分量を調整したりします。
増加する透析患者数
2009年の調査によれば、日本では一般人口の約440人に1人の割合で透析を受けている患者さんがいます。1990年には約1200人に1人の割合だったので、この20年ほどで約3倍に増加したことになります。
人工透析患者さんは、日々の生活の中で1回4~5時間かかる治療を週に3回受けており、身体的にも精神的にもたいへんです。腎臓移植を受ける患者さんも徐々に増えていますが、透析患者さん全体からみるとまだまだ少数と言わざるを得ません。次世代の医療として、腎臓を再生させる研究も進められていますが、腎臓は複雑な臓器なので実現はまだ先のことでしょう。腎不全患者さんの多くが人工透析に頼らざるを得ないのが現実なのです。
医学と工学の融合「臨床工学」
人工透析治療に携わるのは医師や看護師だけではありません。臨床工学技士も透析関連装置の操作やその保守管理を通じて、また患者さんと接することを通じて大切な役割を担っています。臨床工学技士とは、人工透析のほかにも人工心肺装置や人工呼吸器など、高度な医療機器を扱うことができるコ・メディカル(医療専門職)です。
医療現場で臨床工学技士が果たす役割は、医療機器の進歩とともに今後ますます大きくなると考えられます。医学と工学の融合をめざした「臨床工学」という学問も生まれました。患者さんの治療に役立つ新たな技術や医療機器の開発が期待されているのです。
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先生情報 / 大学情報
藤田医科大学 医療科学部 医療検査学科 教授 中井 滋 先生
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