排出CO₂削減のキーマテリアル:高温耐熱材料
まだまだ必要な火力発電
地球温暖化を防ぐためのCO₂削減が、エネルギー開発における大きな課題となっています。原子力発電に依存しないという流れの中、太陽光発電や風力発電の開発が進んでいますが、これらの新エネルギーは、現在、発電全体のわずか数%しか占めていません。将来的にこうした自然エネルギーの割合を増やすことは重要ですが、あとしばらくは、火力発電にがんばってもらう必要があるでしょう。
効率的な発電のための新材料
火力発電は、燃料を燃やし、そのエネルギーでタービンを回し発電するシステムです。燃料として、LNG(液化天然ガス)を燃やしてガスタービンを回す方式は、石油を使うよりもCO₂の排出が少なく効率が良いことから、現在脚光を浴びています。また、火力発電では、発生したエネルギーを100%電気に変換することはできず、最新の設備で約50%という変換効率にとどまっています。この割合をもっと増やすことができれば、かなりの省エネルギーを実現できるわけです。火力発電を含むすべての熱機関では、燃焼温度を高くすればするほど効率が良いのですが、それほどの高温に耐えられる材料が存在しないため、より高温に耐えられる材料の開発が待たれています。
高温耐熱材料が世の中を変える
材料となる合金を作るには、金属の特性を知ることが大切です。例えば力が加わるとどういうことが起こるかを観察すると、金属の結晶にずれが生じて変形するといった現象がわかり、そのずれをどう制御するかという課題が見えてきます。また、表面をセラミックスなど熱伝導率の低い素材でコーティングすると、さらに高温に耐えることができるようになります。
タービンの形状を決めるのは、材料力学や流体力学を駆使した設計です。しかし設計は材料の強度などの条件に基づいて行われていますので、材料が変われば設計自体ががらっと変わることになります。材料の開発は、あまり表に出ない研究ですが、世の中を一変させる可能性を秘めているのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 工学部 機械工学科 教授 田中 克志 先生
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