経営コストの削減に貢献する「離散凸解析」
応用研究が進む「離散凸解析」
現実のさまざまな問題を数理モデルに置き換えて、計算できる形にしようという学問が、オペレーションズ・リサーチ(OR)です。その中でも「離散凸解析」は、1990年代後半から研究され始めた最適化の理論です。これまでに、ゲーム理論やネットワーク、ロジスティクス、経済の均衡を求める分野、電気回路などの工学一般にも応用可能であることがわかっていますが、最近では「在庫管理」と「スケジューリング」への応用が認められ、注目されています。
欠品を防ぎながら在庫保管費用を抑える
企業が工場で生産管理をする場合、欠品は防がなければなりませんが、在庫保管費用も抑えなければなりません。つまり、欠品によるペナルティーと運営費を勘案してコストを最小にする計算が求められます。どれだけ在庫を持つかは、現場の勘や経験に頼っているのが実状でした。それを、コンピュータを使って客観的に計算しようというのがORによる在庫管理です。これまでにも計算方法はありましたが、時間がかかったり、規模が小さいものしかできなかったり、現場の状況に似せたそれらしい結果で我慢したりと、使い勝手はよくありませんでした。しかし、離散凸解析を使うと、瞬時に、より正確で適正な在庫量が計算できるようになるのです。
サービスを維持しながら人件費を抑制する
離散凸解析は、コールセンターのオペレーターのシフトを組むスケジューリングにも応用ができます。できるだけお客さんを待たせないためには、人を多く雇う必要があります。しかし、それには人件費(コスト)がかかるので、企業としては「お客さんのクレームが出ない程度に人員を確保しておきたい」ということになります。したがって、時間帯ごとに、需要予測に基づいた予測値から必要なオペレーターの数を割り出します。これについても、離散凸解析で開発されたアルゴリズム(計算手順)とソフトウェアを使って、どの時間帯に何人のオペレーターが必要か、一瞬で計算できます。このようにORは社会に貢献しているのです。
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