ティラノサウルスは子煩悩? 骨から見える恐竜たちの生きた姿
恐竜の脳の形をCTスキャンで復元
太古の地球に生きていた恐竜たちはどのような体の機能を持っていたのでしょうか。その手がかりとなる脳や神経は残っていませんが、骨化石の内部を調べることで、脳の形や神経の分布などの情報が得られます。例えば頭骨内部の空洞部分から取った型は、脳の形に概ね一致します。以前は頭骨の化石を半分に切って内部に充填している堆積物を取り除いて型を取っていましたが、今は化石を切らずにCTスキャンをしたうえでコンピュータ処理し、デジタル的に型を作る方法が主流です。
俊敏な狩人フクイベナートル
「フクイベナートル」は福井県で見つかった小型の獣脚類で、全長2メートル、体重30キロほどの二足歩行の恐竜です。その頭骨をCTスキャンして脳の形を調べてみたところ、におい情報を処理する領域の「嗅球」が大きく、鼻が利く恐竜であったことがわかりました。また頭骨からは、内耳の三半規管や蝸牛(かぎゅう)管の形も計測可能です。バランス感覚をつかさどる三半規管の発達具合や音を感じる蝸牛管の長さから、フクイベナートルは俊敏な動きが可能で比較的広い音域を聞くことができたと推察できます。これらの結果と化石が見つかった地層の環境などを組み合わせると、大きな河川沿いの茂みで、においや音を察知して昆虫などを素早く捕らえて食べていたフクイベナートルの姿が浮かび上がります。
子煩悩でグルメな恐竜?
CTスキャンで、神経や血管が通っていた骨の中の管の様子も知ることができます。ティラノサウルスの強固な下あごには複雑に枝分かれした神経が高密度に分布しており、繊細なセンサ機能もあったことがわかりました。同じく下あごの神経が発達しているワニのように、ティラノサウルスも子どもを優しくくわえて運んでいたかもしれません。また、ティラノサウルスが捕食する恐竜の化石には特定の部分にかみ跡が多く残っていることから、えさが豊富な状況下では、下あごを器用に使って肉をえり好みして食べていたと想像できます。
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