英語の詩の美しさはリズムにあり

英語の詩の美しさはリズムにあり

美しい詩は天から降りてくる

 イギリス・ロマン派を代表する詩人、ウィリアム・ワーズワスは、それまでの詩人とは異なるやり方で詩を作りました。それまでの技法は、古代ギリシャ時代から書き継がれてきた過去の詩をベースに、自分の解釈を少しだけ新たに加えるやり方でした。ところがワーズワスの詩は、過去の作品とは基本的に関わりがありません。美しい風景の中に身を置き、五感で感じたイメージを頭の中で寝かせておくと、ある日突然、詩があふれ出てきたと言います。200行もの完璧な詩を、一気に書き上げることができたほどです。ワーズワスにとって、詩は「神の言葉」、「天から降りてくるもの」でした。あふれ出る言葉を、推敲することもなかったのです。

言葉に磨きをかけて結晶化する

一方で、詩はブロットの上、修正して創りあげるものという考え方がありました。ブロット(blot)とは黒く塗りつぶすこと、つまり不要な表現をできる限り削ぎ落とすことです。一度書いた言葉に磨きをかけ、より精緻な表現に結晶化していきます。そして、詩人たちは形にこだわり、行末の音をそろえる「脚韻(きゃくいん)」などの形式が重んじられました。しかし、その窮屈さに対する反発が生まれ、再び多くの詩人が自由な創造を求めるようになったのです。20世紀に入ると、形式にとらわれず自由に書き綴る自由詩が主流になっていきました。

音読して初めて気づく英詩の魅力

ところで英語は、アクセントの強弱の繰り返しを重視する言葉です。英詩も同様に、規則的な繰り返しが詩を成り立たせる重要な要因になっていて、これが詩の美しさにつながっています。リズムがあるから、声に出して読む楽しさがあり、英詩を読むことは、「舌の快楽」と言われるのです。
言葉の美しさ、文章の良し悪しは、声に出して読んでみるとよくわかります。英詩の魅力を知るためには、大きな声で、アクセントの強弱をはっきりと意識して読むことが一番なのです。

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京都大学 総合人間学部 国際文明学系 教授 桂山 康司 先生

京都大学 総合人間学部 国際文明学系 教授 桂山 康司 先生

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英文学、英語学

メッセージ

私は中学生の頃から教師になりたいと思い、一番得意な英語を選びました。特に文法が好きで、「英語とはこうでなければならない」と持論を持つほどうぬぼれていました。ところが、日本の英語学の祖といわれる市河三喜の本を読んで、「僕よりもすごい人がいる!」と衝撃を受けました。そこからさらにのめり込み、大学で英詩の素晴らしさに出会って、今に至ります。私の目標は、英語の言葉としての魅力を伝えて、一人でも多くの人に好きになってもらうことです。文学を研究しているからこそできることだと、誇りを持って取り組んでいます。

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京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。