翻訳を「研究」すれば、外国はもっと面白くなる?!
「翻訳研究」ってどんな学問?
外国語で書かれた文章を、別の言語に変えて伝える翻訳者は、よく「黒子」「裏方」と言われます。本当にそうなのでしょうか。実は、翻訳された文章には、翻訳者の思いや、翻訳された当時の文化、社会、歴史的な背景など、多くの情報が詰まっています。「翻訳研究」とは、翻訳された文章を通して、これらの要素を読み解いていく学問です。翻訳者の人生やこれまでの仕事、または、編集者や出版社、書評家、読者など、翻訳者を取り巻くネットワークから、翻訳文を分析してみると、いろいろなことがわかります。
原作本との比較から翻訳者の思いが見える?
例えば、2006年に日本語に翻訳・出版されたイスラエルの児童文学『ぼくによろしく』を読んでみましょう。原作が書かれたのは1970年代ですから、出版年との間に約40年の開きがあります。翻訳者は、長年イスラエルと関わってきた日本人で、イスラエルへの深い愛情が感じられます。
このような情報も頭に入れつつ、原作と翻訳本を比べてみます。すると、原作で登場する日本名に似たアラビア人の使用人の名前が、翻訳本ではまったく違う名前に変更されていることに気づきます。物語上、特に重要な人物ではありませんが、翻訳者にとっては、イスラエルへの印象を悪くしないために大事なところだったのかもしれません。2冊の本をじっくり比べてみると、翻訳者の思いだけでなく、イスラエルと日本、それぞれの子ども観や文化的な違いなども見えてくるのです。
機械翻訳も研究の対象になる!
翻訳は、はるか昔から行われてきましたが、翻訳研究は、戦後に始まりました。最初は言語学的な研究が中心でしたが、1980~90年代に入ると、文化的、社会的な側面からも研究が進められるようになりました。コンピュータを利用した機械翻訳の出現により、2000年代になると人間と機械が一緒に訳した翻訳の研究も始まっています。翻訳研究の世界は、これからもどんどん広がっていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
神戸市外国語大学 外国語学部 ロシア学科 准教授 エレナ バイビコワ 先生
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