「らしさ」って何? 私たちの言語文化に潜む無意識の固定観念とは
男女平等は進んでいる? 教科書に潜むメッセージ
最近は、学校において、出席簿が男女混合になったり、制服のスカートとズボンを性別に関係なく選べるようになったりと、「男女平等」は少しずつ進んでいるように思えます。しかし、男女の役割に対する固定観念はまだまだ根深く残っています。例えば、ある英語の教科書には、家族が公園でランチをしている場面で、母親が子どもにご飯を与えている一方、父親は自分のご飯を食べている姿など、性別役割分業規範を反映したイメージが描かれていたりします。私たちの思考は、このような普段から無意識に目にしている「ことば」や「絵」といったさまざまな記号に大きく影響を受けています。
ことばから「らしさ」について考える
あなたは何かを食べたときに言うのは、「おいしい」ですか、「うまい」ですか?「女性は『うまい』とは言わない」と言われることもありますが、そんなことはありません。逆に、男性だからといって常に「うまい」と言うとは限りません。男女を問わず、かしこまった会食の席で「うまい」と言う人は少ないでしょう。あくまで、人は場面に合わせて「おいしい」と「うまい」を使い分けているだけであり、性別が必ずしも関係するとは限りません。社会言語学の世界では、ドラマ・アニメ・漫画・映画のなかで登場人物が使用することばによってつくられる「らしさ」についての研究も進められています。
私たちの社会を分断することば
ディズニー映画「ズートピア」は、「肉食動物と草食動物の分断はなくなった」ことを示す学校劇から始まりますが、実際には「それって本当?」という疑問が視聴者に投げかけられているのです。そして、社会に根ざした固定観念はなかなか払拭(ふっしょく)できないことが、言語的に、そして視覚的に「ズートピア」のなかで表されています。私たちの社会にあふれている「ことば」などの記号がいかに私たちの固定観念を表しているか、さらにはこれらの記号が私たちの社会を分断することにつながるのかを考えることはとても重要なのです。
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佛教大学 文学部 英米学科 准教授 稲永 知世 先生
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