小説、絵本、詩、漫画などジャンルを横断して「文学」を考える
『スラムダンク』と日米のカルチャー
文学研究では、小説や絵本、詩、漫画などそれぞれのジャンルに特化した研究が主流です。しかしそれらを横断的に、あるいは国際的な比較を通して研究することで得られる発見があります。例えば『スラムダンク』という漫画には、先輩・後輩関係や、テスト勉強といった日本独特の「部活文化」が描かれています。一方で主人公をはじめとする主要キャラクターは、アメリカNBAのスタープレイヤーがモデルになっており、試合でもNBAさながらの迫力あるプレーが描かれています。日本の漫画がアメリカのポピュラーカルチャー(サブカルチャー)に影響を受けている一つの例といえるでしょう。
絵本賞受賞作品と人種
文学研究においては人種も重要なトピックです。アメリカには、その年に出版された最も優れた子ども向け絵本に「コールデコット賞」という権威ある賞が与えられます。1938年から2014年までの受賞作品を調べてみると、主人公が白人以外の作品はわずかに14作しかありません。そのうちの5作は1970年代に集中しており、21世紀に入るとわずか1作です。非白人が主人公の14作では肌の色がポジティブに描かれていますが、アメリカに暮らす白人以外の人の割合を考えれば、その数は少なすぎるといえるでしょう。
柔軟で幅広い研究活動
こうした研究では、作品そのものを読み込むだけでなく、ジャンル、性別、人種といった作品の背景について考える姿勢も不可欠です。また、国際比較においては現地を訪れ、現地の食べ物を食べ、買い物やサービスにお金を使い、美術館を訪れ、文学を読み、TV番組を見たりすることも有効です。このような柔軟で幅広い活動を通して、小説や詩、漫画、絵本といった文学を調べ、それぞれの作品で人生や人間性、文化がどのように表現されているのかを明らかにすることは、文学研究の大切な役割なのです。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 人文学部 英語学科 教授 ピーターズ ジェファソン 先生
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