外国語を取り込んで発達した英語の歴史

外国語を取り込んで発達した英語の歴史

ハリーの呪文はどこの国の言葉?

映画『ハリー・ポッター』では、魔法をかける時に呪文を唱えます。呪文の意味がわかる人は、日本にはそれほどいないでしょう。でも、キリスト教の牧師ならわかるかもしれません。なぜなら、あの呪文はラテン語に基づくものだからです。
古代ギリシア語やラテン語などは、ヨーロッパで理想の言葉とされてきました。なぜなら、新約聖書はギリシア語で書かれており、カトリック教会ではそのラテン語訳が用いられ、かつての大学の役割は、ギリシア語やラテン語の聖書が読める牧師を養成することだったからです。

英語と日本語は似ている?

日本語と英語、それぞれの言葉の成り立ちを調べると、意外に似ていることがわかります。日本語は大陸から中国語を取り入れることで発達しました。英語も、ヨーロッパ大陸からフランス語やラテン語を取り込むことで、語彙を増やしてきたのです。
同じヨーロッパの言語でも、フランス語は純粋主義と言われ、外国の言葉をあまり受け入れませんでした。これに対し英語は、外国語をどんどん輸入して自分たちの言葉にしたのです。日本語も明治時代以降は、外国語をカタカナ言葉に変え、積極的に取り入れてきました。日本とイギリスは同じ島国だから、このように言語発展の歴史が似ているのかもしれません。

「尋ねる」を意味する英語は3つ

もともと英語は、現在のドイツ北部からイギリスに来た人々が持ち込んだ言葉です。そして、バイキングの言葉「古ノルド語」も入ってきました。次いで11世紀にノルマン人に征服され、北フランスの言葉が大量に入ってきました。
例えば、「尋ねる」を意味する単語は、もともとの言葉「ask」とフランス語系の「inquire」、ラテン語系の「interrogate」があります。「interrogate」が最も新しい借入語で、これはイギリスには16世紀になってから大陸のルネサンス運動が波及してきたことが理由です。このように言語の歴史をたどると、民族性や文化が見えてくるのです。

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京都大学 総合人間学部 国際文明学系 教授 桂山 康司 先生

京都大学 総合人間学部 国際文明学系 教授 桂山 康司 先生

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英文学、英語学

メッセージ

私は中学生の頃から教師になりたいと思い、一番得意な英語を選びました。特に文法が好きで、「英語とはこうでなければならない」と持論を持つほどうぬぼれていました。ところが、日本の英語学の祖といわれる市河三喜の本を読んで、「僕よりもすごい人がいる!」と衝撃を受けました。そこからさらにのめり込み、大学で英詩の素晴らしさに出会って、今に至ります。私の目標は、英語の言葉としての魅力を伝えて、一人でも多くの人に好きになってもらうことです。文学を研究しているからこそできることだと、誇りを持って取り組んでいます。

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京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。