日本の「おもてなし」を、グローバルなビジネス展開に生かす!

日本の「おもてなし」を、グローバルなビジネス展開に生かす!

「おもてなし」とは「以て、為す」の意

日本的サービスを表現する「おもてなし」とは、「以(もっ)て、為(な)す」が語源です。「何を」以て、「何を」為すかを具体的に示さず、その時の相手の様子から情報を察知し、その場で判断・行動するという意味があります。特徴的な要素を分析すると、料亭の女将が客の心理や意図を汲み取る「慮(おもんぱか)り」、和菓子職人が季節感などを色や形で表現して客に想像・理解させる「見立て」、店と客が共に切磋琢磨する「擦り合わせ」というキーワードが浮かび上がります。「おもてなし」というシンプルなルールが、日本の高度なサービスを生み出していると考えられます。

「コンテクスト(文脈)」の価値

このような日本的サービスでは、コンテクスト(文化や歴史といった背景)の理解が必要です。一方で、文化や価値観が異なる国々で事業を行う時は、契約書やマニュアルなど言葉で明示することが必要です。そうすることで、どこでも同じモノづくりやサービスが成立するという考え方です。日本もコンテクストを切り落として、こうしたグローバル化を行っていました。しかし同時に、このようなやり方は真似がしやすく価値も下落しやすいということがわかってきました。そこで再びコンテクストの重要性が見直されています。コンテクストこそ再現困難な独自性を秘め、価値の持続や創出につながる可能性があるのです。

「いい塩梅」のビジネス展開

持続可能な国際的ビジネス展開を考える時は、このコンテクストに基づいたしきたりを「守る」部分と相手に合わせて「変える」部分の線引きを「いい塩梅(あんばい)」で決めなければなりません。例えば、華道の家元は、流派のコンテクスト(伝統的な基本理念)を踏襲しつつ、現地の花材を柔軟に取り入れることで、生け花の文化を世界規模で広げることに成功しています。こうしたバランス感覚が強みになるのです。現在、個別の「おもてなし」の事例を分析し、グローバル展開への活用や新たなビジネスモデルの構築をめざした研究が行われています。

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京都大学 経営管理大学院  教授 原 良憲 先生

京都大学 経営管理大学院 教授 原 良憲 先生

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経営学

メッセージ

高校時代は理系のクラスに在籍し、大学では工学分野に進学しました。その後、コンピュータやソフトウェアの研究を経て、今は京都で日本の「おもてなし」から新たなビジネスモデルを探究する活動に取り組んでいます。ある意味では理系から文系的な分野への転換と言えますが、現在は文系も理系もない文理融合的な領域が非常に重要になってきています。高校生活では基礎をきっちり身につけると同時に、学部や学科にこだわらず幅広く好奇心を持って勉強することをお勧めします。

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