病気と一生つき合う人への看護ケアを考える
患者さんの人生を長いスパンで見る慢性期看護
看護ケアは、患者さんがたどる経過に応じて4つのグループに定義されています。「急性期」「回復期(移行期)」「慢性期」「終末期」です。
慢性期看護学は、慢性期を中心にしながら、広い意味では慢性疾患をもつすべての成人が対象となります。その人の年齢や生活、価値観などから問題をくみ取る細やかな看護ケアが求められます。生活のなかで病気をよりよく管理し、より満足できる人生を送れるように、病院と地域の橋渡しも行います。その実践には、「人の一生とともに歩む看護ケア」の視点が必要です。
アメリカで生まれた「病みの軌跡」理論
人の一生を理解する看護ケアには、看護技術や自身の人生経験だけでなく、多くの理論が支えになります。よく知られているのが「病みの軌跡」理論です。1984年に社会学者ストラウスと、看護学者のコービンが提唱しました。増え続ける慢性疾患患者が早くから社会問題化していたアメリカで、慢性疾患を生きるとはどういうことかをテーマに看護を学ぶ大学院生たちが収集した多様なデータから、社会の実態を反映する理論が生み出されました。慢性疾患の患者さんは在宅での管理が長くなります。病気と人生を管理して希望する方向へと向かいながら、その人だけの「病みの軌跡」が形づくられていくのです。
患者さんと話し、闘病記を読むことも財産に
患者さんは病気を人生の出来事と重ね合わせてとらえています。医師が病気の経過を月日でとらえるのに対し、患者さんは家族旅行などの出来事に病気を関連づけてとらえるなど、時間の感覚が違うのです。慢性期の看護ケアでは医療者の視点を一度降りて、患者さんの見ている世界をともに見るぐらいの気持ちが必要です。患者さんが困っていることを本当に理解できるようになるには、人間的成熟も大きな助けになります。いろいろな患者さんの話から学ぶことはたくさんありますし、闘病記を読むのも助けになります。
患者さんとゆっくりコミュニケーションをとる姿勢は、看護の本質とも重なるものなのです。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 看護学部 看護学科 教授 内田 雅子 先生
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