地域づくりの新しい資源は、すべて地域の中にある
地域づくりの歴史から学び始める
地域づくりの歴史とは、地域で起きた問題を解決しようとしてきた運動の歴史だといえます。日本では高度成長期の1960~1970年代に公害反対運動が起こりました。公害はまさに地域の問題で、都市化への警鐘となったのです。そこから景観保全・町並み保存・文化財保護の動きへつながっていきます。そして現在は、再び東京と地方の格差が拡大して、一極集中が大きな問題になっています。そこで地域の資源を探して暮らしやすい地域をつくる運動が起こり、大学でも地域づくりを学ぶ学生が増えてきました。
フィールドワークと地域づくり
地域の魅力的な資源を探すうえで、現場で地域を動かしている人たちの話を聞き、分析していくフィールドワークという手法は大きな役割を担っています。「新しいことは研究室にはない、すべて地域の中にある」とすら言われるほどです。地元の成功事例も格好の研究材料であり、活動の中心にいる人たちはどこが違い、すばらしいのかを見つけ、調べていきます。ここでいう地域資源はまず、「人」です。例えば農産物の六次産業化をする場合でも、可能性のある品目を見つける人がいてこそ、始められます。どうすれば人は資源に気づくのかが、地域づくりのポイントです。
地域経済をどうやって回していくか
とはいえ、地域づくりは簡単ではありません。そこに経済の仕組みや産業史などの史実を取り入れることで、しっかりした視点をもつことができ、地元の経済についても、見えるものが変わってくるのです。経済とは循環ですから、お金が地域でどう回っているのかを見定めます。稼いだお金がどれだけ域外に出て、域外からはどれだけ入ってくるのか、どのような仕組みで地域は収入を得ているか、といった調査・分析が必要です。さらに、地域の人たちが自力で持続していく活動を経済的な視点から学びながらも、「経済だけが残り、暮らしがなくならないように」していくことも、学問としての大切な役割なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 宇都宮 千穂 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
地域経済学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?