子どもを対象とした作業療法が、人生の生きやすさにつながる
ニーズが高まる幼児の作業療法
近年、子どもを対象とした作業療法のニーズが高まっています。自閉症や発達障害のほか、生まれつき麻痺があるなど、特性によって生きにくさを感じている子どもたちがいます。そうした子が小学生になると、椅子に座る、文字の読み書きといった動作が難しいケースが多く、勉強や学校が嫌になって不登校になる、引きこもるといった子も少なくありません。それを防ぐためにも、幼児期のうちから作業療法で対処すれば、学校に楽しく行けるようになるでしょう。
自信や生きる力になる
それにはまず、その子の状態を把握することが必要です。小さな音が大きく感じるといった聴覚や、腕を曲げるといった体の感覚、視覚、認知機能なども一人ひとり異なります。必要に応じて心理学の側面や、脳機能を検証することもあります。そして、できないことに特化することなく、すべての動作の土台となる姿勢やバランス感覚、脳の状態など、全体をみながら子どもにアプローチします。
また、遊びの感覚が大切なため、おもちゃや遊具をメインに、鉛筆を持つための補助グリップなども活用しつつ、状態の改善を図ります。作業療法を通じて、「字が書けた」、「縄跳びができた」という成功体験を重ねると、本人の自信につながります。それが、学校に通い、将来は就職して自分で生きていく力にもつながるのです。
本人と日本の課題解決に
幼児は自分の状態をうまく説明できませんので、保護者はもちろん、保育士や学校の先生、児童発達支援センターの職員や保健師など、多くの人たちと関わりながら支援します。そして、実践的な検証によるエビデンスを蓄積し、感覚の評価や状態に合わせた療法の指針ができれば、幼児への作業療法がより広がるでしょう。
発達障害などがある人の得意分野を、いかに労働力や自立への力につなげるかが課題となっています。誰もが生きやすい人生を手にするためにも、幼児期からの作業療法が重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
関西医療大学 保健医療学部 作業療法学科 教授 大歳 太郎 先生
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