イギリス文学研究から読み解く、政治との密接な関係
大英帝国全盛期に文豪を多数輩出
イギリスの国力発展と、イギリス文学は密接にリンクしています。イギリスは産業革命によって世界初の産業資本主義社会を迎え、世界各地で植民地支配を進めました。
19世紀の大英帝国全盛期にイギリスは、ブロンテ姉妹、チャールズ・ディケンズ、ジョージ・エリオット、トマス・ハーディ、オスカー・ワイルドといった文豪を数多く輩出し、英文学は学問の一分野となりました。当時の作品を読むと、イギリス人が、中東やインド、アジアの国々に抑圧的な見方をしていた風潮が読み取れます。
国民をまとめるために利用された文学教育
ヴィクトリア女王のもとでイギリスは世界を支配、リードしつつも、国内は混乱していました。支配階級と、産業革命後に生まれた中産階級の資本家たち、そして下層の労働者階級との間で格差は拡大し、3階層による階級間闘争が激しくなっていたのです。
支配階級は、教養のない中産階級に文学で教養をつけさせれば、相互理解ができ、下層階級にも文学によって共通の考えが生まれやすく、共感できる範囲が広がるだろうと考えたのです。当時は哲学や政治学が王道の学問だったので、文学は、女性の教育にも手ごろな受け皿となりました。こうして、国民をまとめるツールとして、文学教育が利用され始めたのです。
第一次大戦後の英国再興にも、利用された文学
20世紀に入って第一次大戦を迎えると、国民の士気を高めるため、文学が戦争に利用されます。シェイクスピアなどの古典を学び、愛国心や選ばれし民族という崇高さを自覚させたのです。イギリスは第一次大戦に辛くも勝利したものの、失ったものも多く、国全体が疲れ果て、進む方向が見えない状況となりました。
戦後の1920~30年代、ケンブリッジ大学を中心に、英文学を読み、人間らしい生き方を模索する研究が活発になり、復興の一助となりました。このように、文学の政治利用が最も顕著に見てとれる事例が、イギリスとイギリス文学の関係なのです。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 鳥飼 真人 先生
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