講義No.08617 外国文学

イギリス文学研究から読み解く、政治との密接な関係

イギリス文学研究から読み解く、政治との密接な関係

大英帝国全盛期に文豪を多数輩出

イギリスの国力発展と、イギリス文学は密接にリンクしています。イギリスは産業革命によって世界初の産業資本主義社会を迎え、世界各地で植民地支配を進めました。
19世紀の大英帝国全盛期にイギリスは、ブロンテ姉妹、チャールズ・ディケンズ、ジョージ・エリオット、トマス・ハーディ、オスカー・ワイルドといった文豪を数多く輩出し、英文学は学問の一分野となりました。当時の作品を読むと、イギリス人が、中東やインド、アジアの国々に抑圧的な見方をしていた風潮が読み取れます。

国民をまとめるために利用された文学教育

ヴィクトリア女王のもとでイギリスは世界を支配、リードしつつも、国内は混乱していました。支配階級と、産業革命後に生まれた中産階級の資本家たち、そして下層の労働者階級との間で格差は拡大し、3階層による階級間闘争が激しくなっていたのです。
支配階級は、教養のない中産階級に文学で教養をつけさせれば、相互理解ができ、下層階級にも文学によって共通の考えが生まれやすく、共感できる範囲が広がるだろうと考えたのです。当時は哲学や政治学が王道の学問だったので、文学は、女性の教育にも手ごろな受け皿となりました。こうして、国民をまとめるツールとして、文学教育が利用され始めたのです。

第一次大戦後の英国再興にも、利用された文学

20世紀に入って第一次大戦を迎えると、国民の士気を高めるため、文学が戦争に利用されます。シェイクスピアなどの古典を学び、愛国心や選ばれし民族という崇高さを自覚させたのです。イギリスは第一次大戦に辛くも勝利したものの、失ったものも多く、国全体が疲れ果て、進む方向が見えない状況となりました。
戦後の1920~30年代、ケンブリッジ大学を中心に、英文学を読み、人間らしい生き方を模索する研究が活発になり、復興の一助となりました。このように、文学の政治利用が最も顕著に見てとれる事例が、イギリスとイギリス文学の関係なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 鳥飼 真人 先生

高知県立大学 文化学部 文化学科 教授 鳥飼 真人 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

文学、政治学

メッセージ

私はイギリス文学を研究しています。文学研究とは、単なる架空の物語を読み、それについて感想を述べ合うだけの学問ではありません。文学作品は、いま生きている現実の世界を考える上で、非常に役立つツールなのです。
文学研究によって培われた文学的センスは、あなたがこれから社会で活躍するために必要不可欠な、実用的なセンスです。文学研究に興味があるなら、私たちと一緒に高知県立大学で文学を学びましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

高知県立大学に関心を持ったあなたは

高知県立大学は、文化学部、看護学部、社会福祉学部、健康栄養学部の4学部で構成しています。高知県は全国と比較して、高齢化で10年、人口減少で15年も先行しています。少子高齢化社会や南海トラフ地震対策など山積する課題を乗り越えて、未来の社会をどう形成するかに、学生と教職員は真剣に取り組んでいます。全学生が地域で活動し、地域の人々とともに学びあう教育に力を入れており、卒業後には、学部で身につけた専門知識を生かして地域で活躍できる人材となることをめざしています。