スポーツ時の行動からわかる、「人間」と「自然界」との結びつき
スポーツも研究対象となる心理学
もともと哲学から派生して誕生した心理学は、「人間とは何か」という根源的な問いをベースに、とても幅広いテーマを扱っていることを知っていますか。人の心について考えるという側面は心理学の一部であり、人間の行動や知覚、発達、社会性など、さまざまな領域を研究することができる学問です。人の行動も扱えるということは、「スポーツ」も心理学の研究対象となりえます。スポーツで行われているさまざまな行動を分析し、数値化することで、人間への理解を深める「スポーツ心理学」という分野が存在します。
テニスに見られる「フラクタル構造」
例えば、テニスでは利き手の表裏を使った「フォアハンド」「バックハンド」というボールの打ち方があります。そのフォアハンドとバックハンドを交互に入れ替えてボールを打つとき、プレイヤーは非常に複雑な動きをしているように見えます。しかし、その行動を数値化して解析してみると、実は数学の「フラクタル構造」という理論と全く同じ規則性を持っていることが浮かび上がってきます。これは自然界の中でも数多く観察されている構造のひとつで、一見すると無秩序に見えるけれども、よく観察すると同じ構造が繰り返されているというものです。具体的な例では、リアス式の海岸線や雲、肺、腸の内壁などがフラクタル構造をしています。スポーツをしているときの人間の行動が、実は自然界でよく見られるフラクタル構造と結びついているという事実は、私たちも自然界の一部であるという示唆を与えてくれます。
スポーツ心理学の可能性
このような研究を行うスポーツ心理学は、まだ歴史の若い学問です。研究成果はスポーツ界で活用されるだけでなく、いずれは高齢者の行動や運動なども含めて、日常生活の中で幅広く活用される日が来るでしょう。スポーツ心理学は、私たちがまだ知らない人間の可能性を発見できるかもしれない、将来的な伸びしろのある分野だと言えるのです。
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新潟医療福祉大学 心理・福祉学部 心理健康学科 教授 山本 裕二 先生
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