微小流路に流れる培養液が細胞を活性化! マイクロ流体デバイスとは

微小流路に流れる培養液が細胞を活性化! マイクロ流体デバイスとは

微細加工技術で体内環境を模倣

ナノサイズ、マイクロサイズの微細加工がなされた部品でつくられた小さな機械が、目覚ましい発展を遂げています。そうした機械の一種「マイクロ流体デバイス」が注目されています。
マイクロ流体デバイスは、名刺サイズの基板の上に微小な流路(溝)をつくり、小さなポンプで培養液を流しながら複数の臓器の細胞を培養して、人体の機能を再現することができるものです。新しい薬を開発する場合、従来はプラスチックの皿で細胞を培養し、化学物質を与えて反応を見る実験が行われてきました。それがマイクロ流体デバイスによって、より体内に近い環境を再現できるようになったのです。

体液の「流れ」を再現することの意義

体内の臓器には直径 10μm前後の毛細血管が張り巡らされており、細胞は常に流れる血液の近くに存在します。特に体液が流れている管の細胞が「流れ」という物理的な力を感知することが、その機能に影響するのです。つまり、マイクロ流体デバイス上で培養液を流すと、単に液に浸すよりも体内の環境に近くなり、培養細胞が活性化します。例えば不妊治療研究で、皿の上ではうまくいかなかった精巣細胞の培養が、マイクロ流体デバイス上では半年もの長い期間、細胞の活性を保つことができました。
人体には血管のほかリンパ管、尿細管など各種の体液の流路があり、マイクロ流体デバイスでそれらを再現することも可能です。また、肺胞の伸縮、腸のぜん動運動など、体内のさまざまな「物理的な力」を培養細胞に与える研究も行われています。

創薬に応用するために必要な技術

このようなシステムを創薬のツールとして普及させるためには、「使いやすく、コストがかからない」ことが重要です。マイクロ流体デバイスの画期的な点は、微小なポンプをデバイス上に組み込んだことです。従来は、高額で大がかりな外部ポンプとつなぐことが必要でしたが、それが不要になったことでコストが下がり、製薬会社も導入しやすくなりました。新しい薬の開発スピードが上がるものと期待されています。

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東海大学 工学部 生物工学科 教授 木村 啓志 先生

東海大学 工学部 生物工学科 教授 木村 啓志 先生

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マイクロ流体工学、細胞・組織工学

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