見えないものを測定する: データサイエンスから見た心理学
「頭がいい」ってどんな人?
誰かを「頭がいい」と評価する時、「学校の成績がいい」「難しい言葉をたくさん知っている」「記憶力がいい」など、その基準は実にさまざまです。こうした基準を探し出し、それぞれを数値化して、「頭がいい」といった目に見えない評価を客観的に測る手法を「因子分析」と呼びます。因子分析は、データサイエンス(大量のデータから問題解決に必要な知見を引き出す学問領域)で使われている分析手法の1つです。IQテスト、性格診断、人事評価、マーケティングなど、社会のあらゆる場面で使われています。
「売れている」のはなぜ?
マーケティングでは、特定の商品が売れている理由や、他社商品との違いなどを明らかにするために因子分析が使われています。例えば、よく似たお菓子を複数のメーカーで比較するために、顧客に購入の際に重視したポイントを5点満点で回答してもらうとします。A社の商品の方が売れているのに、「おいしい」といった「商品力」の評価はB社の方が高いという結果が出るかもしれません。一方、A社の評価をさらに見ていき、「形がかわいい」といった「ファッション性」の評価が他社より高いことがわかれば、顧客は味より見た目を重視していることが明らかになります。
「世界市民」とは?
最近は、国境を越えて活躍する「世界市民」の存在が求められるようになりました。データサイエンスでは、どんな人が「世界市民」なのか、「世界市民」をどう測るかという研究が進められています。留学したことがある、海外の文化をよく知っている、といった経験や知識ではなく、社会の不正義に対して行動を起こすことのできる思考や態度を持っているかが主要な尺度になると考えられています。経験や知識は、思考や態度に影響を与えはするものの、直接的な尺度ではないのです。
因子分析を使って「目に見えない評価」を言語化する経験や知識は、思考を整理する力を養い、「世界市民」に必要なコミュニケーション能力の向上にも貢献するでしょう。
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創価大学 学士課程教育機構 講師 服部 南見 先生
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