映像の魅力を引き出す「映画音楽」の役割
映画音楽のルーツはオペラ
映画の盛り上がるシーンには必ず音楽が流れています。観客は映像だけでなく、音楽によっても感情を揺さぶられているのです。『スター・ウォーズ』では、主要登場人物を印象付けるテーマ音楽が作られています。悪役のダース・ベイダーの登場なのにジェダイの騎士のテーマを流して、ダース・ベイダーとジェダイに関係があることをうかがわせるシーンもあります。
登場人物に結び付けた曲や旋律はライトモティーフと呼ばれ、クラシック音楽の作曲家ワーグナーのオペラで編み出された手法です。そしてヨーロッパでのユダヤ人迫害によりアメリカに逃れた作曲家が、ハリウッドで映画音楽に関わったことで定着しました。
ディズニー映画と歌の関係
ディズニー映画では歌が欠かせません。『リトル・マーメイド』では、ヒロインのアリエルが「パート・オブ・ユア・ワールド」という曲を歌います。伴奏は音階が低音から高音に上がり、海底から人間の世界へ行ってみたいというヒロインの気持ちを旋律でも表現しています。
ディズニー映画ではソングライターが映画製作の最初の段階から関わるのが特徴です。『アナと雪の女王』では、当初エルサは完全に悪役として描かれていましたが、エルサの複雑な感情を歌にしたいというソングライターの意志により、前半のストーリー展開やエルサの人物造形が変わったと言われています。それほどディズニー映画は歌と密接な関係があるのです。
映画音楽の便利な役割
映画音楽には便利な役割もあります。歌のシーンでは、ストーリーをいったん止めて、じっくりと歌詞を聞かせることで、観客に登場人物の気持ちを強く伝え、共感させることができます。また、『ライオン・キング』では、劇中歌「ハクナ・マタタ」が流れている間に主人公のシンバが子どもから一気に成長して大きくなります。語りで説明するとくどいことも、音楽と映像だけでスマートに見せられます。このように音楽に着目すると、違う側面から映画をひもとくことができるのです。
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先生情報 / 大学情報
フェリス女学院大学 グローバル教養学部 心理コミュニケーション学科 メディア専攻 ※2025年4月開設 教授 谷口 昭弘 先生
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