アメリカの女性作家、トニ・モリスンの作品から得る他者への理解
ノーベル賞作家トニ・モリスン
トニ・モリスンは1931年生まれのアフリカ系アメリカ人の女性作家です。彼女は、1970年に『青い眼がほしい』で小説デビューしました。これが高く評価され、その後も多くの名作を書き、アフリカ系アメリカ人作家として初めてノーベル文学賞を受賞しました。女性であり、また黒人でもあったモリスンの作品では、白人社会との対立よりも、民族としての歴史、記憶、伝承などが豊かに描かれています。奴隷制をはじめ、人々の記憶から抜け落ちていく過去の黒人たちの生の実態や、白人の姿に憧れ、その劣等感からくる自己嫌悪などといった黒人社会内部の問題を生々しく描きました。
魔術的リアリズム
モリスンの作品には、象徴的な表現や、句読点やスペースの削除、複数の語り手の視点を交錯させるなど、さまざまな実験的な手法が使われていることからも、しばしば「ポストモダン的」と評されます。また、コロンビアの作家ガブリエル・ガルシア=マルケスによってよく知られるようになった「魔術的リアリズム」という手法は、しばしば、日常的な描写と非日常的な描写が織り交ざった表現技法などが特徴とされるものですが、モリスンの作品にも大きな影響を与えているようです。
他者を理解し自分を考える
アメリカ文学の研究において、原典、つまり英語で書かれた著作を読むことは、少しハードルが高いように思えますが、辞書を使って読み進めるうちに、徐々に理解できるようになっていきます。また、人々の成り立ちにおいて、日本よりも多様な構造を持つアメリカの文学作品には、さまざまな人の生き方や社会のあり方が描かれています。アメリカに特有の問題を扱ったテーマであっても、物語中の出来事や人々の気持ちを通して「他者」の思いや生き方を理解することができます。それが身近にいる他者を理解し、自分の人生を考えるヒントにつながる点も、文学を知り、研究することの大きな意義だといえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
フェリス女学院大学 グローバル教養学部 文化表現学科 ヨーロッパ・アメリカ専攻 ※2025年4月開設 准教授 小泉 泉 先生
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