「環境を守りたい」は口だけ? 統計で明らかになる意識と行動

「環境を守りたい」は口だけ? 統計で明らかになる意識と行動

環境配慮行動の調査

SDGsについての教育が普及し、多くの人々が環境を守ることの大切さを認識しています。そうした意識はどの程度、行動につながっているのでしょうか。ある研究では、人々の環境配慮行動についての調査が定期的に行われてきました。「エコ商品の購入」「省エネ」「節水」「リサイクル」「公共交通の利用」「エコバッグの使用」という6つの側面からアンケート調査を行ったところ、若者より50代後半以降の人、男性よりも女性の方が積極的に環境配慮行動を行うという結果が明らかになりました。

リーダーのあり方

別の調査では、人々が抱く理想のリーダーに関する調査も行われました。仕事の能力や対人関係など11の項目からなるアンケート調査です。日本では判断力と決断力、キャリアの長さや経験、仕事に取り組む姿勢という、主にプロセスの面が求められることがわかりました。一方、韓国では良い階層の出身である、顔が広い、部下に尊敬されるといった人格面が、中国では技術力の高さや部下に利益をもたらすといった結果の面が重視されることがわかっています。こうした調査は、今後求められるグローバルリーダーを考える上で、大きなヒントを与えてくれます。

データの信ぴょう性

アンケートをはじめとする調査によって多くのデータを集め、分析する学問を「統計学」といいます。年収や人口といった「量的」調査はもちろん、環境配慮行動やリーダーに求める資質といった「質的」調査を行うことも可能です。人々がもつ価値観や行動、ものごとの見方といった質的な調査を行うためには、データの信ぴょう性が何より重視されます。回答者の属性の設定や抽出方法、面接・電話・Webといった調査の実施方法、あるいは不正回答の見分け方など、統計学には多くのノウハウが蓄積されて、理論化されてきました。こうした知見を用いてより信頼に足るデータを収集・分析し、科学的な根拠に基づいて社会の実態を明らかにしていくことも、統計学がもつ重要な役割の1つなのです。

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先生情報 / 大学情報

同志社大学 文化情報学部 文化情報学科 教授 鄭 躍軍 先生

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統計科学、社会調査論、計量社会科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

マラソン競技は、多くの人が優勝をめざして参加しますが、実際にその目的を果たせるのは1人だけです。だからといって、残りの参加者が無駄なことをしたわけではなく、走るというプロセスそのものにも大きな価値があるのです。研究や勉強にも同じことがあてはまります。この研究・勉強をしてどうなるのか、将来どんなキャリアを積めるのかという結果ばかりを気にするよりも、正しいプロセスを確立して実践することをより大切にすることで、結果は自然についてくるのだと思います。

先生への質問

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同志社大学は14学部34学科16研究科・学生数約29,000人を擁する総合大学です。2025年に創立150周年を迎え、さらなる教育・研究改革を進めています。
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