スマートフォンやタブレット端末を軽く、薄くする技術
電子パーツを小型化し、部品点数を減少させる
スマートフォンやタブレット端末は、どんどん軽く薄くなっています。また、スマートウォッチやめがね型のスマートグラスなどのウェアラブル端末も登場しています。このような変化は、電子パーツの小型化や部品点数の減少によって可能になっています。特に重要な部分を占めるのが電源回路です。その理由は、機能ごとに要求される電圧が異なるため、複数の電源回路が必要だからです。そこで回路を1つにまとめ小型化できれば、製品をより軽く薄くすることができます。
半導体スイッチとコンデンサで電源回路を考える
現在の電源回路の多くは磁性部品を使用しています。3次元構造のコイルを使うため、どうしても厚みが出ます。そこで磁性部品を使わずに、半導体スイッチとコンデンサだけで電源回路を作る考え方があります。これだと厚みを減らせますが、弱点もあります。バッテリが供給する電流や電圧は刻々と変化しています。磁性部品はこの連続的な変化に柔軟に対応して一定の電圧を簡単に出力できます。しかし、半導体スイッチとコンデンサだけでそれができないので、レギュレータと呼ばれる電子部品で電流を一定にする必要があり、エネルギー損失が発生します。小型化できても、バッテリの減りが速くなってしまうのです。
電源回路を1つにまとめてより小さく
この問題を解決するには、コンデンサを増やして電圧変換比を増加させ、連続に近い電圧切り替えを行うことが有効です。ただそれでは、厚みは減らせても面積は増えてしまいます。そこで、電源回路を1つにまとめる省スペース化を進めています。磁性部品を使用する場合は電磁ノイズが発生するため、部品配置に注意を払う必要がありますが、この方法なら電磁ノイズを気にする必要がありません。出力を制御するコントローラーを加えれば、複数の機能に対応できます。電源回路が減るため、エネルギー損失が減少するメリットもあります。次世代モバイル機器の小型化にはこうした研究が大きな鍵を握っているのです。
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福岡工業大学 工学部 電子情報工学科 教授 江口 啓 先生
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