講義No.09280 環境学

環境保全のスタンダードは誰が作っている?

環境保全のスタンダードは誰が作っている?

東京オリンピックのもう1つの目標

2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、環境保全を目標としています。メイン会場の建設に使用される材料を、環境に配慮した森林から調達された木材に、建設にともなって出る廃棄物を環境に優しいものに、また使用されるエネルギーも二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーにと、さまざまな環境対策が実施されます。このような環境保全は、大会の目標であるだけでなく、人類の未来の目標でもあります。オリンピックを契機に、環境保全の考え方を普及させようとしているのです。

ティッシュペーパーのFSCマークって何?

環境保全を推進するには、実施のためのガイドラインを決める必要があります。それを誰がどういう方法で行うのかが問題になります。しかし、国ごとに基準がばらばらでは、国際的な基準になりません。そこで国に所属しないNGO(非政府組織)のような第三者機関がガイドラインを決め、認証を行っています。
例えば、ティッシュペーパーにはFSCマークが付いたものがあります。FSC(森林管理協議会)とは森林破壊を防ぎ、責任ある森林管理を普及させることを目標とするNGOです。FSCに認証された製品は、FSCのガイドラインに従って原料を調達し、製造されていることを示しています。

環境認証は企業活動にも影響を与える

第三者機関による認証は信頼できるものでなければなりません。そのため透明性を確保して、複数の機関が認証するなど常に信頼性確保のための努力を行っています。それに対して国や業界団体の認証は、政策的配慮などが働いてしまう可能性があり、信頼性が劣ります。
こうした環境認証は、単に環境保全を推進するだけでなく、経済にも影響を与えます。例えば環境認証を規準とする国に対しては、認証されなければ製品を輸出することができません。反対に国や企業の定める環境規準が世界の標準となれば、有利に経済活動を行えるようになるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

福岡工業大学 社会環境学部 社会環境学科 教授 渡邉 智明 先生

福岡工業大学 社会環境学部 社会環境学科 教授 渡邉 智明 先生

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社会環境学

メッセージ

私は環境問題を解決するための環境政策を研究しています。環境問題というと太陽光発電などの技術を思い浮かべるかもしれません。しかし私が専門とするのは、技術ではなく、その技術が普及する背景、例えば国ごとに違う環境問題へのアプローチなど、環境技術を取り巻く社会制度の研究です。
高校とは異なり、大学はいろいろなことを自発的に学ぶ場です。大学ではあなたが考える材料を提供してくれることでしょう。自らの興味を出発点に、環境問題をはじめとしたいろいろな問題への関心を深めていくことができます。

先生への質問

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福岡工業大学は工学部、情報工学部、社会環境学部(文系)、大学院、短期大学部からなり、「情報」「環境」「モノづくり」の3分野を柱に、実践的な教育を実施。面倒見の良さや就職率の高さは、全国的に高く評価されている。JR鹿児島本線の快速停車駅「福工大前駅」に直結する利便性と、水と光と緑あふれるエコキャンパス、機能的なデザイン設計の校舎が、快適な学生生活を応援します。