がん合併妊娠の患者さんをサポートする臨床看護
もし妊娠中に「がん」が発見されたら?
悪性新生物、いわゆる「がん」は、昭和56年頃から日本人の死因第1位となっています。なかでも乳がんは罹患(りかん)する人が増えているがんの1つで、最近では女性の2人に1人が乳がんになる時代と言われています。妊娠中の検診などでたまたま妊婦さんに乳がんや子宮がんが発見されるケースも少なくありません。
こうした状況では、本人も家族も妊娠と治療の選択に深く悩むことになります。「妊娠を継続しながらがん治療をするか」「今回の妊娠はあきらめてがん治療に専念するか」「出産がすんでからがん治療を始めるか」、妊娠週数とがんの病態によっては、お母さんの命と赤ちゃんのどちらを優先するかという、とてもつらい選択を迫られます。
妊婦さんに何を、いつ、どう伝えるか
がん合併妊娠の患者さんには、治療を延期すればその間にどれだけがんが進行するかのリスクがわかりませんし、妊娠の継続ががんにどんな影響を与えるかもわかりません。妊娠中期に使えるとされている一部のがん治療薬も、本当に副作用がないか不安に思うでしょう。
治療方針について医師、看護師、助産師などが相談し、本人にいつ、何を伝えて、よりよい選択ができるようにどうサポートしていくかが大きな課題です。時には医療スタッフ同士で選択に対する考えが食い違うこともあるので、医療スタッフ間の意思疎通も重要です。
母性を見守りながら患者さんをケアする看護を
治療と妊娠の折り合いをどうつけるか、治療はどういう方法が可能か、妊娠は継続できるのかなど、担当医は選択肢を本人にできるだけ平易に説明します。その後、説明がよく理解できたか確認したり、心のケアをしたりする場面では看護師が大きく関わります。患者さんや家族は、がんと妊娠という2つのとても大きな不安を抱えています。がん合併妊娠の「臨床看護」では、患者さんを見守りながら、よりよい治療選択のサポートができる看護師が、今後いっそう求められるようになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
関西福祉大学 看護学部 看護学科 教授 堀 理江 先生
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