「重複障がい」に対応した新たなリハビリテーションのあり方

「重複障がい」に対応した新たなリハビリテーションのあり方

増えつつある重複障がい

医学の進歩により、平均寿命が延び、昔は死亡率が高かった病気でも生存率が上がるようになりました。それにともない、高齢化が進み、複数の障がいのある「重複(ちょうふく)障がい」の人が増えています。例えば、糖尿病にかかると、血液の流れが悪くなる末梢循環障がいという症状が出て、視覚障がいや内臓機能の障がいを併発することがあります。このような生活習慣病からくる重複障がいに対しては、リハビリテーションにおいても新たな方法が必要とされます。

テクノロジーの進歩が生む新たなリハビリ

理学療法をはじめとするリハビリテーションは、以前は運動障がいを改善するというイメージの強いものでした。しかし、重複障がいのある人は、運動障がいに加えて、心機能障がいや腎機能障がい、視覚・聴覚障がいなどがある場合が少なくありません。そこで、機能回復だけではなく、悪化の予防をも包括した、安全で効果的なリハビリが求められます。
例えば重複障がい者では、通常の歩行訓練ができないケースがあります。これまで、立って歩けない人は、プールに行き水中で歩行訓練をするしかありませんでしたが、現在では、ベッドに寝た姿勢のままこげる自転車や、風船の中に入るような形で歩行訓練ができる空圧免荷(めんか)歩行器などが開発されています。

人が輝くためのリハビリ

理学療法の分野では、機械を使うリハビリテーションにどのような効果があるかを検証するのも、大事な研究です。運動療法が難しい人には、電気や超音波などで刺激を与えることで、筋力などの衰えを防ぐ方法も研究されており、これなら、寝たきりの人に対してもリハビリが行えるようになります。筋力の衰えを防いだり、関節の可動域を広げたりすることで、その人の活動範囲が広がり、それが「QOL(生活の質)」の向上につながるのです。
障がいとは、その人の個性であるからこそ、さまざまな個性に対応し、「その人が輝いて、元気になるため」のリハビリが期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

筑波技術大学 保健科学部 保健学科 准教授 三浦 美佐 先生

筑波技術大学 保健科学部 保健学科 准教授 三浦 美佐 先生

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理学療法学

メッセージ

現在は医療技術の進歩が著しく、リハビリテーションのための技術や支援機器に関しても目覚ましい改良がなされてきました。しかし、重要なのは、人それぞれの「QOL(生活の質)」を尊重し、障がいに応じた配慮をすることです。
そのためには、人に興味を持ち、いろいろな生活体験を重ね、想像力や感性を養うよう心がけてください。あなたの若い貴重な「今」という時間の中で、好奇心を持ち、失敗を恐れず試行錯誤を重ねること、それがリハビリの分野に限らず大切なことだと考えています。

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