困難な膵臓がんにどう立ち向かうか?
膵臓がんによる死亡者数の深刻な増加
国立がん研究センターのがん登録・統計(2017年)によると、がんでの死亡率が高い部位の上位に肝臓と膵(すい)臓が入っています。男性では4位に肝臓、5位に膵臓が、女性では3位に膵臓が入っています。2014年の統計では男女とも膵臓がんは5位までに入っていませんでしたが、ここ10年で死亡者数が1.5倍にも増えているのです。これには、膵臓がん自体の発症者が増えていることに加え、膵臓がんは発見したときには病状がすでに進行していることが多く、根治が難しいという理由が挙げられます。
手術前後の抗がん剤投与が効果的
悪性腫瘍(がん)の治療は、化学療法(抗がん剤)、放射線療法、手術療法が3本柱で、最近では免疫療法も有効な手段と考えられています。
膵臓がんの治療は、切除可能な場合は患部を取り除く手術療法になりますが、手術前に抗がん剤を使うことで腫瘍を小さくしてから手術をすることができます。また、手術後にも抗がん剤を使い、肺など遠隔に飛んでいるかもしれないがん細胞をたたくことで、再発予防にもつながります。近年、がんの増殖スピードを抑える効果のある抗がん剤も登場し、再発までの期間が延びるなど治療成績が大きく向上しました。このように、局所療法である手術と全身療法である化学療法など、2つ以上の治療方法を組み合わせて治療を行うことを集学的治療と呼びます。
膵臓がんが見つかったら最善を尽くす
治すことが難しい膵臓がんを、早期に発見することはできないのでしょうか? 膵臓がんはある程度進行しないと自覚症状が出ない上に、検診を受ける全員にMRI(磁気共鳴画像)撮影を行うことは医療経済的に問題があり、早期発見が難しいのです。そのため現状では、膵臓がんが見つかった段階で治療にベストを尽くすことが大切です。今後、どういう場合に手術が適しているのかなどの研究が進めば、さらなる治療成績の向上が期待されます。
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帝京大学 医学部 外科学講座 教授 佐野 圭二 先生
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