環境問題を解決する次世代を育む 自分ごととして学ぶ環境教育
環境問題はひとつの分野では解決できない
環境問題を解決するためには、分野の垣根を超えて協力する必要があります。例えば原子力発電に関する環境問題は、原子力に関する物理の知識だけでは解決できません。原子力発電を運用するための法律、環境への影響など、さまざまな分野の知識が求められるからです。そのため環境問題への意識を高めるための「環境教育」では知識を与えるだけでなく、情報をクリティカルに捉える習慣、解決策を模索する創造力、他者と協力するためのコミュニケーションスキルや、説得力のある提案をするための客観的な視点も、実践を交えながら身につけます。
環境教育のプログラム
環境教育では発達段階に合わせたプログラムが行われています。例えば幼児に対してはいきなり知識を与えるのではなく、体験を通して自然を身近に感じてもらうことを重視します。小学校高学年からは知識の教育に力を入れ、さらに高校生以降は生徒が主体的に学べるよう実践を交えたアクティブ・ラーニングを行います。その結果、授業などで早期から環境問題について考える機会のあった世代は、食品ロスやマイクロプラスチックによる環境汚染など、より具体的な環境問題に関心を持つ傾向を示しました。
「自分ごと」としてとらえるために
大学生になると、地域などのコミュニティと関わりながら環境問題解決に向けた活動に取り組みます。例えばゴミ問題を扱うときは世界の現状や対策を調べるだけでなく、大学内や地域でできることを考え実践します。実際に大学生がペットボトルゴミ削減のために、大学内にマイボトル用の給水器を導入した事例があります。学内で決定権を持つ人物に、給水器の需要を数値化したアンケート結果や、給水器導入によるメリットなどを挙げながらプレゼンテーションを行い、説得したのです。
環境教育を受けた大学生を対象としたアンケート調査では「授業を通して環境問題を自分ごととして考えられるようになった」という声が多く、能動的に学ぶ環境教育のカリキュラムが一定の成果を上げているといえます。
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先生情報 / 大学情報
国際基督教大学(ICU) 教養学部 アーツ・サイエンス学科 教授 布柴 達男 先生
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